数年越しの。【りぶ】

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波の音が強くなったような気がして、顔を上げると、少し離れたところで、Aさんが砂浜になにやら描いている。


「Aさん、なに描いてるの？」

「あ、おかえりなさい。見てわかりませんか？うさぎです」


「…耳、長くない？すごく」



顔の３倍は長い耳のうさぎを神妙な気持ちで見る。
ていうか俺、なにやってんの、Aさん放ってなにやってんの…！



▽△


５匹目のうさぎを描こうとしたところで、影ができて、顔を上げようとしたら抱きしめられ、尻餅をつく。陸さん、急に動いたと思ったら！


「Aさん、かっこいいね」

「…なにがですか」


「ふつう、男から言うものでしょ？」

「え、ああ、さっきのですか」


よかった、スルーされたらまじでどうしようかと思った。海に飛び込もうかとも考えてた。



「まあ、あの、私は今の仕事で、ちゃんと一人前になったら、生活面でも陸さんを支えていくので、もしよかったら…」


「だから、俺が言うことだって笑」



あーもう可愛いな、と楽しそうに笑う陸さんの顔が、目の前にあって。思考停止。しばらく経って離れると、Aさん、目、閉じようね、とまた笑う。だ、うわ、キス…！いや私もしたけど！


口をぱくぱくさせていると、ふわり、と陸さんの手が私の頭に乗って。



「俺と、家族になってください」




▽△


陸さんと私の薬指に、同じデザインの指輪が嵌まり、
陸さんからはA、と呼ばれるようになるのは、

数年後の話。
　

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