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帰路について数分。
私はある事に気が付いてしまった。


__これ、傘差してる意味なくね?


傘というのは、本来一人で使う物であり、
2人というのは実は結構限界がある。
しかも今回は折り畳み。
どちらかの身体の半分が出ているはずだ。
で、私はすっぽり入っている。
ということは……。



「ねぇヅラ、お前傘の中に入ってる?」
「……いや、あんまり」
「やっぱり。もうちょいこっち入れば?」
「……大丈夫だ」
「声震えてるのに?」
「……。」



ありゃ、これは強がってるな。
男の変なプライドが勝ったか。



「ほら、早くこっち来なよ。
バカは風邪引かないって言うけどさ、
流石に私の良心が痛むわ」

「そんなに嫌味を言っておいて心配するのか」
「嫌味じゃないよ、本心だよ」
「それを嫌味と言うのだ馬鹿女」
「バカは余計だ不審者」



あらあら、また始まってしまった。
私とヅラの言い合いが。
私はただ本心を言っただけなのに。


「馬鹿」「アホ」「カス」「不審者」
なんてレベルが低すぎる言い合いをしていたら
いつの間にか私の家の前に着いていた。



「んじゃ、私はこれで。ありがとねぇ」
「さっきも言ったが、心が込もってないぞ」
「えっ、照れてる?照れてるの小太郎くん?」
「貴様の口から下の名前が出てくるとは。
なかなかに気味が悪いな」
「失礼な!
誰も言わないから私が言ってあげたのに!」

「ハイハイ分かったから、早く帰れ」
「あっ、めんどくさくなった?」
「それ以外に何がある?」
「さぁね。んじゃ、また明日ッ!」

「さらば、永遠に」
「……グッバイフォーエバー!!禿げろ!」
「禿げません!!!!」



ギャーギャー騒ぎ、私はやっと家に入った。
ただいまぁ、とキッチンにいるであろう
母さんに声をかけた。


つーかヅラ、めっちゃ濡れてたなぁ。
無駄に紳士はところが腹が立つ。
この借りはちゃんと何かで返さなければ。


タンタンッとリズム良く階段を駆け上がり、
自分の部屋の扉をガチャリと開けた。





__ちなみに、私とヅラをことを
『カップル』と言う人が沢山居るが、
それは何かの間違いである。

最初に言ったが、
私達は『犬猿の仲』なのだから__。

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作者名:みのりん | 作成日時:2017年6月11日 22時

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