依存病人【d!】 (ページ11)

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ペットボトルを傾けて丁度良い温度の水が渇きを潤した。入っていた水の三分の一程を一気に飲むと、ペットボトルを口から離して同時に一息ついた。

「はぁ...」

いま落ち着いてみれば、どこか、むず痒い違和感のようなものが襲ってくる。
それは、何か心に引っかかるような、確信を持ったものではないが、何となく気になった。

Aは疑問を残しつつも、これ以上考えても無駄だと考えるのをやめた。

来るまでもう一眠りでもしようか。

何もすることのできないAは思った。

足元に直された布団をもう一度被りなおした、その時だった。

突如として静寂を切りさき、サイレンの音が轟いた。警笛のような音が何度も繰り返される。

いくら疲れた頭といえど、今この状態がただ事ではない事ぐらいは自然と理解できた。
ぎしりとベッドのスプリングが音を立てた。急いでナースコールを押すとベッドの端により、足を下ろそうとした。しかし。足を動かそうとくるぶしに力を込めた途端にふくらはぎから太ももにかけて肉を切り裂くような痛みが走った。

いくら軽傷とは言えど、あんな大事故に巻き込まれたのだから、そう簡単に動けるはずが無いのに。どうしていいのか思案するも、何日も十分な栄養を取り込んでいない脳が、まともな判断を下せるはずもなく、当然、良いアイデアは出てこない。

焦りと恐怖で一杯になったAは避難といった手段をあきらめ、布団を頭からかぶってシェルターを作った。

不毛な行動だとは理解しているが、他に何も出来ることなどない。暫く繭に包まって過ごしていると、ドアの開く音が聞こえた。

よかった、看護師さんが来てくれた。

何が起こったのか尋ねようと布団の隙間から頭を出した。

Aは扉の方に目を向けた途端、雷に打たれたような衝撃を覚えた。

誰だ。