＊４、重なった ページ7
「んッ…冷たッ…」
「あ！沖田、起きた。
…って無視！？渾身のギャグなんだけど…」
確か俺ァ…屯所戻って即寝した筈だ。
何でこいつがいやがる。
起き上がると額からタオルが落ちて来た。
近くには桶があって。つまり。
「どんぐらい前からいたんで？」
「うーん分かんない、今何時？」
起きたばっかの奴に聞くのかよ。
部屋の時計に目を向ければ１９時を指していた。
まさか、夕刊届けに来てからずっと…
「銀ちゃんに叱られる！あ、お粥持ってくるね」
走り去っていくそいつを止めようと手を引くと、その手は冷え切っていて。何時間やってたんだ。
暗くて見えねェが、きっと真っ赤でヒリヒリと痛んでる筈だ。
「いらねェ事すんな。
放っといたってあれぐらい、いつか治る」
「別に…茶髪くんの為じゃないよ。
ただ苦しそうで…重なったから。
銀ちゃんの税金を無駄にしてほしくないし。
早く働け、絶賛税金泥棒」
あぁほんと。こういう所だ。
でも重なったって。一体ェ何と。
今度こそ走り去っていったあいつの叫び声が遠くで響いたがもう気にしない。
正直、食欲はないが食わねェって選択肢もない。
「ねぇねぇ美味しい？
うん、美味しい！！超、美味しい！！」
「自己完結させてんじゃねーよ。って遠い」
遠くからガン見されながら食べ続けていると、ちょっといいかと土方の声がして障子が開く。
庭先には…旦那達の姿があった。
「人間不信娘、迎えが来たぞ」
「分かりましたロリ方さん」
「ロリ方って何ッ！？ふざけんじゃねー殺すぞ！」
「ぎ、銀ちゃん…今殺すってこの人がッ！！」
「ちょっとロリ方くん？うちの純粋なAちゃんに何してくれちゃってんの！？」
「そうヨ！！ロリ方なんて、犯罪犯す為に生まれて来たような名前して！」
「ロリ方、本名なわけねェだろ！！」
ロリ方うるせーな、病人の身体に触るだろーが。
さっさとくたばらねェかなー
「お粥、味がないとあれだから卵粥にしたんだ」
「その会話続いてたの」
「あ、そだ。水代払ってね、倍返しでいいよ」
「あぁ倍で返してやらァ」
すると喜んで庭へ駆けて行った。まるで犬。
金たァ一言も言ってねぇが。
ま、借りが出来たみたいで癪だしねィ。
「沖田くんが水代を倍返ししてくれるって！！
集れるだけ集ってみるね銀ちゃん！」
そう言いながら帰っていく。
ほんと、わけ分かんねェ奴。
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作者名：千歌 | 作成日時：2020年8月19日 0時
