40、予期せぬ事態 ページ43
「悪かった」
「は…?今なんて…」
「二度も言わねェ」
「精神科行こ?受診しといた方が良いよ。
あと苦しい…」
抱き締めた腕の中で、必死に胸を押されるが全然力が入ってない。甘っちょろいねィ。
後頭部にタンコブが出来てたから、何となく触ると気持ち悪いからやめろと腕を掴まれた。
やめろって言ってる割にゃ、力が本気じゃねェ。
「沖田が狂った」
肩に顔を乗せると一瞬、震えるのが伝わった。
まぁ、驚くか。
「もう私なら大丈夫だから」
こいつァ全然、俺の気持ちにゃ気付いてねーらしい。
っつか、鈍感過ぎる。
・
二人がやっと往来を歩み出した頃には、既に空は夕焼けに染まりかけている。
「つまり、私はストーカーのストーカー対策の依頼を引き受けてたってこと!?」
「そういうことだろうな」
「あれでも…ストーカーがストーカー対策を?」
「んなの、近付くきっかけでィ」
当てもなく歩いていた二人だが、先導者は3歩手前を歩く沖田だった。着いた先は例の二人が出会った公園。
それが、ほぼ無意識の内に辿り着いた場所で。
「私達が初めて会った公園だよね、ここ。
最初から茶髪くんはgoing my wayな人だった」
「そっちか」
「そっち?「何でもねーよ」」
そっちとは沖田として出会った“2度目”の出会い。
そして、彼女はまだ思い出していない“1度目”
「ほんと強引だった」
夕陽か否か頬が僅かに紅く染まっている。
Aの中にとある感情が芽生えていた。いや正しくは芽生えかけていた。
それは自覚の無い小さな小さな灯りに過ぎず、消えるか燃え上がるかも知れない、不確かな灯火。
「…そういえばあの勝負、私の勝ちだね」
覚えてないと思うけど。と笑う。
あの勝負とはAが助けてと言ったら負けで、沖田が刀を抜いたら負けのあの勝負。
「ちッ、覚えてやがった。
今更、藻搔くなんて臭い真似しねェよ。負けた方は勝った方の願いを一つ叶えるだったっけか」
どうせ何か奢れ。そんな願いだと考えていた。
だが、帰ってきたのは予想外の言葉で。
「じゃあ、万事屋まで送ってくれない…?
今怖いんだよね。背中をガードしてほしいの。
いや…でも待てよ!?沖田くんがいた方が怖いかも」
「残念だったな。
誰もてめェの命なんざ狙ってねーよ」
そんな事言いつつ、万事屋までしっかりとSコートしたのはまた別のお話。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時