３８、謝らなきゃ ページ41
「いやぁ、本当に良かった。
でもこんなに長い期間関わってると、マジ別れ難いですね…もぐもぐ…またストーカーされる予定とかあったら、是非…もぐもぐ……ブベラッ！」
目の前で、人の金で焼肉ならぬパフェを口にしている銀ちゃん。
やっぱ凄いや、次の依頼のフラグまで立ててる。
……ん？あ、天井に突き刺さってる…
…うわッ。今、雨降ってるから吹き込んでくるよ…
「大人気ない以前に、不謹慎だァア！！
…すみません朝比奈さん。これ、電話番号です」
「また、来いヨ。土産は何でもいいからナ」
「ちょ、それは直球過ぎだよ」
流石、みんな胡麻擂りのプロだ。
時が経ち、ストーカーも諦めたらしく被害が無くなっていった。
今までのお礼にと、ファミレスで色々とご馳走になっている。依頼料も貰ってるのに…
「あの、最後にAちゃんを貸してもらえますか」
どうしてもお礼がしたくて。と。
私はどうも気が引けて断ったが、他の3人が軽いノリで行ってこいと。
江戸の街へ出ると、今日も変わる事のない風景に…
探してしまう。
「どうかした？」
「あ…秋なのに、暑いなって」
「そっか。で、Aちゃんは…好きな相手とかいるの？「ごほッごほッツ！！」
思わず、気管に唾液がッ……
女子力の欠片もなく、おっさんの様に咳き込むと背中を摩ってくれた。
好きな人。
……正直、よく分からない。
「分からないです」
「そう。なら良かった」
良かったって何が。
だが、聞く前に他の話題へと移ってしまった。
好きな人…か。
でも、もしかしたら。私が好きなのは。
あの雨の日の男の人なのかもしれない。
『これと交換な』
そう言って紅い傘の代わり、投げ渡された傘。
彼は息切れをしていた。
私の為に走ってくれたんだ。そう思うと嬉しくて。
渡されたのは…真新しいビニール傘。
だけど、すぐ去ってしまって。
ありがとうって言えなくて。
また会えたなら、ちゃんと言おう。
「沖田…？」
一瞬だった。けど、確かにすれ違った。
振り返ると人混みに姿は消えていて。
嫌なんだ。
馬鹿にされるより、何より。
嫌われてしまうのが。一番、胸が痛むんだ。
「謝らなきゃ」
謝っても許されないのなら、そこまでだ。
でも…許してくれるとしたら？
行こう。
「ごめんなさい、涼人さん。やっぱり用事が…」
「…何で、どうして。
…あんなのの何処が良いんだ。僕の方が……」
様子が可笑しい。まるで別人みたいで。
背筋に悪寒が走った。
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作者名：千歌 | 作成日時：2020年8月19日 0時
