37、出逢った日 ページ40
「遠慮なんざ、気色悪ィからやめろ。
んな事してたら、ここじゃ食いっぱぐれて死ぬぞ」
「そうネ、そうネ」
新ちゃんが買って来てくれた食料を食べていると、
一緒になって食べ始めた神楽ちゃんの頭を銀ちゃんがチョップ!!
「お前は加減を知れ」
「明日になったら、傷は塞がる筈ヨ!」
「そうだね」
そして、夜更。忙しい二人のイビキの中で、私は激しい痛みに襲われていた。鋭い頭の痛み。
『殺せ。利益にならない者など殺してしまえ』
アイツらは狂っている。
名を残せない者、才のないものは殺してしまえと。
だけど。私も大概なもので。
殺せなかった。自分のプライドを守った。
彼らはやつれ切ってたのに。身も心も。
殺してくれ。
そう哀訴歎願してきた。でも、私には出来なくて。
きっと。死ぬより辛い、生きる道を歩ませた。
『生きて。生きて私に復.讐しに来てよ』
無理矢理な言い分で。
一人くらい、来ても良さそうなものだけど…
元気かな。笑えてるかな。
それに…ごめん沖田。
自分でも気付かず、嫌われる様な事をしたんだ。
初めて出会った時。
『てめェが噂の万事屋の新入りですかィ。
俺ァ、沖田総悟。真選組で副長やってまさァ』
『………』
『無視上等、ついて来やがれ』
無視したわけじゃ無かった。
でも、言動が火ノ鳥の奴らを思わせて…
臆病なんだ私は。
初めに人を疑ってしまう。強引に引っ張られ、近くにあった公園のベンチに無理矢理座らされた。
『笑え』
何をいきなり、初対面の人に。なんて。
イラッとしたのを覚えている。
『嫌』
笑ってやるもんかって、意地を張って俯いた。
その後は…銀ちゃんが通りかかって。
『Aッ!?お、お、沖田くんに何かされてな…
何かしてねェよな…おい。
ズラの時みたいに、茶をぶっ掛けたりだとか…』
ひとりでブツブツと、何故だか顔を青くする銀ちゃんに笑いを溢す。
『なんでィ、笑えんじゃねーか。
雨でもねぇ晴れてる時ぐれェ、俯いてんなよ』
そう言って少し口角を上げた。
ズバズバ言う人。でも、筋の通った事を言う人。
奴らとは全然違くて。
どんな悪戯をされても、嫌いになんてなれなくて。
ありがとう。その言葉を伝えたい。
・
「零を探せ、連れ帰った者には褒美をやろう」
「その褒美ってのは、何でもいいの?」
「来ていたのか。勿論だ」
「乗った。じゃ、連れてくるね」
ニコリと笑った青年は、船から甲板へと飛び降りた。
あと少しで、夜が明ける。
94人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時