34、恋煩い ページ37
「銀ちゃん、銀ちゃん。どうしよう」
「…んだよ、やめて…揺らさないで!?
うぅ……気持ち悪ィ…何がどうしたってんだよ…」
銀ちゃん達に冷えピタンを貼り付け、近くに正座して自分の胸を押さえた。
「胸が苦しいの。私、病気かな?」
「え…大丈夫なの、それ!?
早く寝ろ。とにかく寝ろ。良い子は寝ろ」
「そうアル!!私が眠らせてやるヨ!」
「…ちょっ、神楽ちゃん!!眠らすって、永眠させちゃ駄目だからッ」
布団に入れられて、冷えピタンを額と頬と顎に貼られた。軽い嫌がらせかな?
でも……病気…なのか、これは。
・
「Aちゃん。って、あら?」
お妙が部屋に入ると、本来看病される側の三人が逆に看病しているのだから驚くのも無理はない。
まぁ、眠っている彼女を取り囲んでいるだけだが。
「…あ…お、お妙。こいつ、胸が苦しいんだと」
「いやよォオオ!!生きてくれ、ジョニィイイ」
「ジョニーって誰だよ!!何かの病気かな…」
「えぇ、病気よ。
恋煩いと言う名のね」
“「えぇえ!?」“
驚く二人に対し、銀時はやっぱりかなんて深く溜め息を吐いては何度もそれを繰り返す。
相手はと、詰め寄る子供組とそれを笑顔ではぐらかすお妙。何も知らず、眠りこけるA。
シュールな光景が広がっていた。
・
思えば、その辺りからだった。
まるで別人の様に変わった沖田は、以前の様に絡んでくる事もなくなり、話し掛ければそれを嫌がるように離れていく。
今ではそれが怖くて、話し掛ける事さえ臆病になってしまって。明日はなんて同じ事の繰り返し。
「Aちゃん、太刀筋がいつもと違うわ。
何かあったの?」
新ちゃんと打ち合いをしていると、途中でお妙ちゃんに静止された。
「確かにそうですね」
「ほんと?自分じゃ分からなかった」
雨が、ポツリと振り出し次第に大荒れに変わる。
三人でお茶を飲んでいると、庭から…
「お妙さぁああん!!雨宿りさせて下さ…ぐえッ!」
最初の頃はびっくりしたけど、今は特にしない。
「すいやせーん、近藤さん……あ、居た」
「もう逃げ出さないようにして下さいな」
今日こそは話し掛けるんだ。
前みたく、自然に。でも…無視されたら。
ボソッ
「…沖田」
情け無い、小さな声は誰にも届かなかった筈。
それなのに。一瞬、紅い瞳と目が合って。合った瞬間すぐ逸らされたが。
胸にチクッとした痛みが走るのが分かった。
また夜が明ける。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時