1、今と昔 ページ4
*新八side*
「え、マジで」
「はい。僕ら以外には基本、何話しても必要以上に疑うでしょ?最近、沖田さんにはそれがないんですよ」
「Aも成長し始めてんのか…
じゃあ、俺も成長しなきゃだな。今日は勝てる気が…ぶべらッ!!!」
こいつは何にも成長してねーな。
Aちゃんが万事屋に来た頃は、かなり酷かった。
話を聞こうとしなければ、お腹が空いてるだろうに食事も疑って口を付けないで。
笑顔なんて見せてくれなかった。
『善意を取り繕って、本当は売り捌く気でしょ?
残念だけど私は不良品だから高くは売れない』
『…馬鹿にすんのも大概にしろよ。俺は金の為にガキ拾うほど落ちぶれちゃいねェ。
てか金の為だったら、とっくの昔にこの食費が手に負えない小娘と、ただのチェリーメガネなんざ売り飛ばしてんだよ』
それからだった。少しずつ。少しずつ。
心を開いてくれたのは。
っていうか、ただのチェリーメガネって何だよッ!!
沖田さんも勿論、例外では無かった。
今も苦手みたいだけどね。
『あり、疑心暗鬼じゃね……何この距離。
ソーシャルディスタンス?』
『近寄らないで!!半径、百メートル以内に入るな!アンタ、この前何したか分かってんの!?』
『軽く、落とし穴にハメやしたねィ』
『軽くじゃねぇえ!!
お前、生き埋めにする気満々だっただろがッ!
走ってくんなぁあ!!やめて、殺されるぅうう!』
沖田さんと遭遇したって、いつもすごい叫んでたなぁ。まぁ、Aちゃんの反応が面白いからだろうけど、あの人は。
でも、ごめん。いつも笑って見てた。
今日のも正直…面白かった。
「神楽ちゃん…新ちゃんが、新ちゃんが!!
ムフフな事考えて、ニヤけてるんだけどッ」
「男っていうのはそういう生き物アル。
でも何か虚しくなるのが必然ヨ」
「いや何て事吹き込んでんのッ!?考えてないし!!」
まぁ、でも。そんなこんなで。
万事屋は今日も笑顔で溢れています。
・
朝風が気持ちいいこの時間。
私は…汗だくになりながら、自転車を飛ばす。
坂がキツい。これが噂の地獄坂。
ここら一体が私の担当の持ち場だ。
「おはよう御座います」
そう言いながら、家主が庭でラジオ体操やら何やらして居れば渡すし家の中にいればポストへ。
そう。私は新聞配達員の仕事もしている。
「嫌だなー今日は居ないといいなー」
出来れば、新聞を打ち破ってでも配達したくない所が一つある。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時