24、花火 ページ27
そして、1時間後。
少し高台になってる、河原近くの草の上に座る。
まぁ、多少遠いがそこまでではない。
「こんな所で花火っての、見られるの?暗くて屋台の明かりしか見えないけど」
「まだ食ってんのかよ。あと数分後でさァ」
〈ただ今より、大江戸花火大会を開始致します〉
アナウンスが入れば、河原の方から歓声が聞こえる。
不思議そうな顔が面白ェ。
10秒前と、カウントダウンが始まって俺が空を見上げれば奴も釣られて見上げる。
〈3、2、1……〉
__ドンッ。と大きな音がすると。
夜空に咲いた色取り取りの花。
「………」
反応はと言えば、真顔でぼっーと見つめてる。
怖いのか、いや何なのか。
暫く、花火を眺めて。音が止んだ間に。
「感想は?」
「綺麗」
そう聞けば珍しく笑ったこいつが、どれ程のもん抱え込んでるかなんて知らねェ。
どんなに重くても、選択肢は変わらないわけで。
背負ってやる。
全部、引っくるめて。
〈以上で、花火大会を終了致します。お忘れ物……〉
・
花火が終わり、万事屋の露店の場所まで戻る途中。
あぁこれで終わりか、なんて少し寂しくなる。
「あれ、もう帰っちゃったみたい」
そっか。朝比奈さんが送ってくれると思うよね。
後で連絡しないとなー
いつまで沖田くんは居るつもりだろ。
さよならの意味で、手を振ると無視された。
「近藤さんも、土方さんも帰っちまったか」
まぁ、今20時半だし。
そう言って万事屋へ足を進めると、付いて来る。
送ってくれる様な優しい人だったっけか。
「なァ、聞いてもいいか。
お前……何処で剣術を習熟したんでィ」
この前の件で気になったのだろう。
でもこれしか聞いてこないのは…気遣いかな。
「私のは、元来の剣術に見様見真似のあらゆる武術を重ねたもので。参考なら、幾らでもあったから」
幾つもの星の地球で言う、天人はそれぞれ異なる手法で攻めて来た。
それは江戸における剣術の様な類のもの。
最早、剣術じゃ無いんじゃね……?
と思った方はご名答だ。
元々、刀では無く傘で闘っていたわけで。
「江戸に来るより前は、何してた」
「…着いた着いた。じゃあね」
タイミング良く、向こうから言えば悪く辿り着いた。
最後の質問を無視して、階段を昇る。
呼び止める声すら無視した。
…話したくなくて。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時