19、探せ ページ22
「随分と芝居が上手くなったじゃないか、
零、やっと見つけた」
森の中に立ち並ぶ、コンテナ。その中の一つの屋根の上、男は血塗れの男の子の頭を撫でた。
その目線の先には一人の人影。
男が零と呼んだ女、Aが歩いていた。
森の、廃屋敷に足を踏み入れる。
・
次の日。いつも通りの時間に目を覚まし、いつも通り縁側に座り奴が来るのを待つ。
が、現れたのは。
「あ、どうも。新聞です」
俺に気付き、渡しに来たのはあいつと似ても似つかない、ヒゲを蓄えたオヤジで。
「あり、いつものは休みですかィ?」
「あぁ…無断欠勤だよ。欠勤したことは無かったのに」
その言葉に寒気が走る。万事屋の仕事か?
いや、それなら電話の一本や二本入れる筈だ。
万事屋に電話するが誰も出ない。
隊服に腕を通す。
もし万が一の場合動きやすいようにだ。
刀をベルトに通し、走って万事屋に向かった。
「旦那、旦那ァ」
居ないのか。寝てんのか。
ドアに手を掛けると、簡単に開いた。
不用心だとかほざいてる暇はない。
部屋に入るが、何処にも姿が見当たらない。
「痛ッてぇ!!またかよ、神楽寝相悪…沖田くん?
なんで、俺の腹踏んでんの…?」
「旦那ァ…疑心暗鬼はどこですかィ?」
「Aなら…まだ帰ってきてねぇのか。反抗期か?」
「新聞配達、無駄欠勤したらしいですぜィ」
「えっ、新聞配達に命掛けてるアイツが?」
「どういう事か、分かりやしたよね」
「ま、ま、まさか…Aちゃん、男とよろしく…
ぐへェエ!!!」
あ、いけね。蹴り飛ばしちまった。
「誘拐されたかもしんねェ」
あいつは丁度、被害者達に近い年齢。
有力な情報は何も無し…いや。
「そこの大型犬、貸してもらえませんかねィ。
うちにゃ警察犬がいねェんで。
デカ犬。Aの匂い辿れるかィ?」
「ワンッ」
そう吠えた犬は、玄関の戸をはっ倒し外へと走っていく。旦那よりかは使えそうだ。
そして着いたのは深く木が生い茂る森。
それ以上は分からないらしく森に入る前に返した。
森の奥へ進むが、一向に景色は変わらない。
早くしねェと…アイツに何かあったら。
怒りを抑えられる気がしない。
「お兄ちゃん、来て。早くッ!」
いきなり現れた幼い雌ガキに、何か言葉を発するより先に手を力強く引かれた。
抵抗しなかったのは…涙を溢していたから。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時