*15、打ち合い←修正済み ページ18
「始め」
土方の声を合図に二人同時に踏み込む。
だが。目の前の疑心暗鬼はまるで別人みてェだ。
いつも以上に表情がなく、目も死んでる。
……動きが読めねェ。
剣術において、ある程度発生する規則性が全く見えてこない。
今まで、何百人と剣を交えたが初めて見た剣捌きだった。そして何より、こっちの動きを分かっていたかの様に避け、攻め込まれる。
刀を弾き、そのままもう一撃くると思い構えれば…もう目の前には居なかった。
背後か。
そう思ったが、俺が背後に竹刀を突くと当たった。
首元には奴の竹刀がかざされていて。
「やめッ。総悟の勝ち…か。
だが、驚れェた。特殊な剣捌きだな」
「…何で、最後手を止めた?」
「私は、人を斬ってるからって嫌いにならない。
第一に沖田のは活人剣なんだから。
殺人刀しか知らない私からしたら、凄いと思う」
無視された質問と、どうも分からない言葉。
お前も人を斬ってきたのか?とは聞けなかった。
目に光が入っていなかったから。
嫌いにならないと言う言葉に安心し、でも何か不安を抱えた。そんな瞬間。
あいつは叫んだり馬鹿で、感情豊かそうに見えてかなり飄々とした女で。
弱みだらけに見えて、弱みを見せちゃくれねェ。
「さっきの俺達も見てたぞ。剣術を習った事があるのかい?すごいじゃないか。な、ザキ」
「えぇ、剣術とは少し違うみたいだったけど」
「幼少期から続けてたんです」
何処か、感情を殺してる様にさえ見える。
いつの間か二人きりで廊下を歩いていた。
部屋が近くなのか。
「私、見くびって手を止めたわけじゃなくて。
ただ嫌だった。
沖田の筋の通った剣に、中途半端な私の剣で応えたくなかった。勝手に逃げたの」
そう真っ直ぐにこっちを見つめて。
なんか、今日は弱々しい。
「納得いかねェ。
…中途半端が完璧になったら、絶対ェ戦おうや」
その時は全力で。と。
俺とこいつの未来が同じ景色だなんて保証はない。
だから、少しでも同じ景色を見る為の口約束。
「うん」
頷いて笑う表情は、初めて見たもので。
その時、外が明るく光り雷が鳴る。
かなり近くだ。
もしかするとビビった面を拝めるかも…
「なんだ、平気なのかよ」
「うん。何なら雷に打たれた事もあるよ」
なら逆に怖くなるもんじゃねーのか。
「可愛げもねェな」
「喧嘩売っとんのか」
「何で人間は怖いんでィ」
他のものは怖がらねーのに。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時