11、ストーカー対策 ページ14
「ほら、アレです」
そう耳元で呟かれる。
振り返ると、遠くに花柄のミニ丈の着物を着て黒い日傘を差す女性が居た。
今日も雨の中、涼人さんの依頼の途中。
〈よし、作戦を始めろ〉
隠した右耳の小型インカムから、聞こえた声。
何処から入手したんだ?依頼の度に、涼人さんが甘い物をくれるから銀ちゃん超張り切ってる。
「手、繋ぎます」
あれ……でも手って、どうやって繋げば…?
手なんて繋いだ事ないし…
「じゃ、行こっか」
先に繋がれてしまった。あー駄目だ手が震えてる。
ごめんなさいと謝ると、ううんと笑ってくれた。
私、ちゃんと仕事出来てるんだろうか。
取り敢えず、ショッピングセンターに入ると。
色んなお店があって思わずはしゃいでしまった。
「この後どうします?」
〈恋人と言やァ、あれだ〉
__ピース作って!
女の子の声がしたけど。どういう心境?
うぉおお光ったッ…
「あははッ大丈夫だから、ピースして」
「何故、ピ、ピース?」
__忘れ物に注意してね!
さっきから誰だよお前。
ぷりくらとやらから出ると、写真が出て来た。
「あ、ちょっ!」
ヤバイよ…いきなり写真破ったよ…
涼人さん、かなりストレス溜まって…あれ。
綺麗に切れてる。
「初めてだったんだね」
「えぇ…やべぇマシーンですね」
帰り万事屋の近くまで送ってくれて、もう大丈夫です。と言うと。
〈後ろでストーカー女が見てる。ハグとかしろ〉
えっ!?
どうしますと相談すると、ちょっとごめんねと。
背中に手が回って。そのまま…
顔がギリギリまで近付く。
演技なんだから怖がるな。いや、やっぱ…怖い。
「ストーカー泣きながら、帰ってったヨ!!」
「やりましたね!!これで、依頼完了ですかね」
「D.T.には分かんねェと思うが、あの涙は嫉妬の涙だよーまだ、続ける必要がありそうだな」
「…いや、ちょっとカッコよさげに言うのやめろよ。すごい腹立つ」
すると、銀ちゃんに頭を撫でられた。
やっぱり落ち着くなぁ。銀ちゃんの手は。
「今日もおつかれさん」
「えへへ」
「その土産の団子、持ってやるよ」
「断る」
さて。夕刊の時間までもう少し…か。
今日も時間ズラそう。
避けたって、如何にもならないのは分かってる。
でも……なんか、会いたくない。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時