*10、勝負の行方 ページ13
『い、いやッ!!』
その声と肩を押された感覚で目を覚ました。目の前には走り去っていく、疑心暗鬼。
…俺、なんかしちまったか?
全然覚えてねェ。つか、寝てたわけで。
隣には新聞紙が置かれていた。
明日にでも聞いてみっか。まぁ、どうせGが出たとかだと思うが。
「おっ、新聞来たかー…よっこらせ」
そう言って、俺の隣に座った近藤さん。
時折響く、風鈴の音が甘味処でも聞こえた音と重なって、またモヤモヤとした何かが湧く。
「どうした総悟。また具合でも悪いのか?
…ふんふん。それはだな……」
今日の一連の話と、謎の苛つきが残ってる事を話すと肩をポンッと叩かれた。
「恋だ。間違いない」
「あぁ、やっぱりですかィ」
その近藤さんらしい、包み隠さず真っ直ぐな答えに認めざるを得なくなったらしい。
朝、起きるのが辛い癖に毎日続けるのも、揶揄う為と理由付けて絡んだのもそれが発端か。
自覚し始めたのは多分、結構前。
「部屋戻りやす」
勿論…いや多分。奴に俺と同じ感情なんざ全くねェ。
なら…変に期待なんかさせんなよ。
「チッ」
もっと早く気付けたら。
今となっちゃもう手遅れか?
いや、気持ちごとかっ攫うだけでィ。
まぁどちらにせよ、勝負は続行させてもらうからな。
__結構前。
『警察だからって、アンタに守られる気なんてないから。だから銀ちゃんの税金安くしろ、このやろー!』
『は?ふざけんな、誰がてめェなんかの為に働くかよ。もし目の前で、やられそうになってもな』
『じゃ、公正に。
私が助けてって声に出したら負け』
『俺は刀抜いたら、負けな』
何が発端だったかは忘れた。
この勝負、今の俺には不利なわけだが。
負けてたまるか。
寝てる間に何があったか聞こうとか思ったが次の日もその次の日も姿を現さない。
だが、新聞は届いてるわけで。担当が変わったのか。
…避けられてる感あってイラつく。
こんだけ大人数いんだ。
何か知ってる奴、探してみっか。
「それなら…今日15時ぐらいに玄関の方に女の子来てたっすね」
女って言やアイツだよな。
いつもは16時前後に配達しにくる。多分、わざと時間変えてんだな。
明日は早く待ち構えるか。
「おい、何寝てんだ!!仕事しろ!!」
「嫌だなー土方さん。俺ァ屯所の警備中ですぜ」
「んな、給料減らされてェか」
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時