疑心暗鬼に、恋は理解し難い危険帯【沖田総悟】 (ページ12)

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９、らしくないページ12

いつもだったら、アイツを見掛けた所で無視するかおちょくるだけだろ。
でも今日はそれをしないで、奴らと衝立を挟んで後ろに座った。自分でも理由が分からない。

「口に餡蜜付いてるよ？はい」

そこからの下り聞いてりゃ、それなりに関係があるのなんざすぐ分かる。まず疑心暗鬼が男と出掛けるわけないしな。

「チッ」

自分でも意味の分からない舌打ちだった。

「ご来店ありがとうございました！！絶対、また来て下さいねー」

時間をズラして店を出る。

屯所に戻ってからも苛つきは一向に収まらねェ。

土方に一発、ぶっ放したが何も変わらない。
寝不足なのかもしんねェ。そう思い、縁側で柱に持たれ掛かったままアイマスクを下ろした。

・

＊

「おーきーたー！おーきーてー！！」

くそッ。
朝、返し忘れたハンドクリーム返そうと思ったのに。
寝てやがるよ。また、新聞投げ付けるか？

いや、寝起きは可哀想だ。
神楽ちゃんに鍋ドラムで起こされた時は死ぬかと思ったもんな。仕方ない、もうちょっと近付くか。

「起きて！！起きないと、これもらうよ…！？」

いいの、ともう一歩近付くと。
手が…伸びてきて。

「え」

伝わってきた体温に驚く。目の前には亜麻色。
慣れない匂いが鼻腔をくすぐって。
そして…

「…A」

初めて、呼ばれた名前。

「い、いやッ！！」

慌てて突き放し走って門を潜り抜けた。
寝惚けてたのか、何なのか。

でも…ビックリした。とにかく、ビックリした。

「あ、お帰りAちゃん」

「新ちゃん…」

「どうしたの、何かあった？」

家に帰ると新ちゃんが顔を出して。
思わず抱き締めるとやっと落ち着いてきた。
理由を聞かれたが言えるわけない。

だって、奴らしくなさ過ぎる。

「何でもない」

そう言って部屋に入ると置かれていたケーキの箱らしき箱。開けてみると、ショートケーキからフルーツタルトまで色々な種類があった。

「あ、お前の分はねぇからな。今日、白玉餡蜜食ったんだ十分だろ…っておい！！何食ってんだ！
ぁあ！！しかも、俺のショートケーキ！」

「じゃあ、私は他のでいいアルよ！」

「ちょっバカ、待てッ！！ぜ、全部ッ…
出せ！出しやがれェ！！俺のケーキを返せッ！」

あーあ。また、暴れ出したよ。
あれ…でも。

「あのケーキって」

「あぁ、朝比奈さんがくれたんだ。
みなさんでって…僕の分、食われたけどね」

やっぱり、いい男だあの人。