プロローグ 現在 ページ2
季節は夏の初旬。
ジンジンと暑い日差しと、このくっそ暑い中更に暖かくなりたいのか、日差しを集める黒い長袖の服が目に入った。変な奴も居たもんだ。
「へッ」
そう苦笑して、フライパンの上に卵を落とす。
「おい、疑心暗鬼。無視すんじゃねーや」
黒い足がフライパンへと、伸びてきて……
声が聞こえた瞬間、卵が空中にFly awayして床にベチャッと落ちた。
「……卵ぉお!!何してくれちゃってんのッ!?
卵に謝れ!!私にも謝れ!!くそやろーー」
「アンタ、マンホールが鉄板代わりになるとでも?
飛んだ阿保だねィ」
え、ならないの!?
え、でも銀ちゃん田舎じゃ当たり前って……
前に長谷川さんのほっぺも焼けてたけど。
「…くっそぉおお!!!あの銀髪野朗ぉお!」
「おい、ちょいと待てや」
「何だよッ、止めんなよ!!」
振り返ると割と真剣な顔をしていた茶髪くん。
卵の恨みは重いぞー!後で呪うぞー!!
「隣町の公園に佐○健が居たらしいですぜィ」
「え、マジ!?ちょっと行ってくる…」
数秒後。
「いねーじゃねぇかぁあ!!!いや、確かに佐藤さんは居たよ?でも…佐藤違いじゃぁああ!!ハァ…ハァ…」
「良い運動になったろィ豚チャン」
苛ついて、右手でスカーフを思い切り引っ張る。
「うぇえ!やめろ、離せッ天然疑心暗鬼」
「天然なめんなよ!?うちの銀ちゃんの天然パーマは舐めてかかると、怪我すっからな!!!」
疑心暗鬼。
こいつからそう呼ばれるように、私は疑心暗鬼だ。
必要以上に物事を疑ってしまう質で。
「Aちゃん!?何してるの駄目だよ!
沖田さん首締まってるから、ね!!」
「あ、新ちゃん…」
スカーフから手を離し、買い物袋を両手に持った新ちゃんを抱き締める。
「会いだがっだぁあ!」
「はいはい。じゃ、ちゃんと沖田さんに謝って」
「茶髪くーん、私の何が悪かったか分からないけど…
ごめんね」
「ちッ」
背中を向けて歩き出せば、ドS野朗が舌打ちをした。
怖ぇぇえ!!やめて怖いって…
帰り道。
買い物袋を半分こしながら歩く。銀ちゃんと茶髪くんへの愚痴を零しながら。
「ただいまー」
そう言えば、神楽ちゃんの返事と銀ちゃんのイビキが聞こえてきて…結局許しちゃうんだけどね。
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作者名:千歌 | 作成日時:2020年8月19日 0時