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話はお開きになり、私は自室へと入れられた。
さっき預けられた荷物も置いてある。
(……………よかった)
あんなに冷や汗をかいたのは久々だったな。
別に相手が地位の高い人だから、とかそういうわけではない。
あの笑顔が怖いのだ。
裏で何を考えているのか読めない。
目も笑っていない。
あまりにも無機質で分からないから怖いのだ。
…これから何されるんだろうか。あの人とはどう接すればいい?
そう思いつつも、私は荷解きをし始めた。
.
.
『…あ』
荷物を取り出していた時、私はある物を見つけた。
『チェス盤………』
そういえば持ってきていたんだった。
このチェス盤は養護施設から持って帰ってきた物だ。
施設の物だから持ち帰れないかと思っていたが、誰も使っていないからと持たせてくれた。
…懐かしいな。
チェス盤は私にとって思い出深いもの。
GFハウスでも、ノーマンとよくチェスをしていた。
いつも私が勝てていたが、ノーマンもなかなかに手強くて焦った時もあった。あまりにも白熱して、ハウス中の家族が見てきた時もあったな。
………あの瞬間は_____本当に楽しくて幸せだった。
このチェス盤は机に置いておくか。対戦相手もいないけど。
だってこれは………私にとって、幸せな思い出の象徴だから。見れば温かい日々を思い出せるだろう。
__________なんて。
もう届かない日々の事を考えてしまったのだった。
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作者名:サナ | 作成日時:2022年1月8日 22時