第8話 ページ9
.
教頭先生に怒られないようにと慌てて乗り込む。
潔子さんは今回は助手席に座ったため、私の隣は影山になった。
そして車内は、ある話題で持ち切りだ。
「そろそろ戻ってくる頃なんだ。烏野の“守護神”」
「しゅ…守護神!?」
あの男気があって、うるさくて、やかましいやつ。
大地さんがそんなかっこいいこと言ってるの知ったら、大喜びするんだろうな。
…あの時のことは辛い記憶だけど、新体制が整いつつある今、もしかしたら、武田先生が言ってたみたいに「化学変化」がここでも起きるかもしれない。
強く、なるために。
「その人、今までどうしてたんですか?」
『一週間の自宅謹慎と、約一か月の部活禁止だったの』
「ふ、不良!不良!?」
影山の質問に答えると、斜め後ろから聞こえてきた日向君の元気な声。それにすかさずツッコミを入れる田中の声も聞こえてきた。練習試合が終わったばかりだというのに、この三人のおかげで車内はずっと賑やかムードだ。
「それにアイツはな、烏野で唯一天才と呼べる選手だ!」
「「!」」
影山が入ってきて唯一じゃなくなったけどね、と田中の言葉に付け足そうとしたら、先に田中に言われてしまった。クソ生意気影山と揶揄されたり天才と持ち上げられたりを一気にされた影山は言葉を詰まらせていて、それが少し面白かった。
そこらでようやくアイツの話が終わり、それぞれが各々のことをし始めた。
私も少しだけ寝ようかな、と思っていたところを、影山に話しかけられた。
「及川さんと、何かあったんすか」
『、…え?』
「俺が中1のとき、及川さん木下さんのこと嫌ってましたよね。
あの人が自分から話があるなんて言うの、珍しいと思って」
今度は、私が言葉を詰まらせる番だった。
影山が純粋な興味から聞いているのは分かるし、他意はないだろう。
だけど、さっきのことを何て言えばいいのか分からない。しかも、後輩にこんな話をするのもどうかと思うし。
「お前らー、そろそろ着くはずだからすぐ出れるよう準備しときなさいよー」
「「うーす」」
「あとA、これからの練習のことで話があるから、後でちょっといいか?」
『はい、わかりました』
返答に迷っていたちょうどのタイミングで、後ろの席から大地さんがみんなに声を掛ける。
練習のことに私が口を出したことなんて一度もないから、きっと大地さんなりのフォローなのだろう。
ちら、と見たら、影山は黙々と帰る準備を進めていた。
168人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふぃる(プロフ) - あかねさん» コメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉…!!のんびり更新ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします(^^) (2020年3月12日 13時) (レス) id: 57a4697fd9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - めっちゃ好きです。このお話読んでふぃるさんのファンになりました笑これからも応援してます!! (2020年3月2日 8時) (レス) id: 012863f737 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふぃる | 作成日時:2020年2月7日 11時