第16話 ページ17
薄暗い部屋。
ようやく目が暗闇に慣れてきたころ、ここがいつも使っているリネン室だということが分かる。
そして、私の腕を引っ張ったのは…
『吉良君、?』
「…ごめん、Aちゃん」
先日チームZでの入寮テストにて敗退が決まった彼だった。
昨日負けが決まった時点でもう帰っているものだとばかり思っていたんだけど…。
部屋が暗くてあんまり見えないけど、顔色はよくなさそうに見えるし、ひょっとしてあれから一切飲み食いなんてしてないんじゃ…。
『…ご飯も何も食べず、どこかで隠れてたの?』
「……」
黙ってうなずいた吉良君。
あまりのやつれ具合に、見ているとさすがに可哀想になる。
『食堂から何か食べれるもの持ってくるよ』
「っいい、…それより、俺の話を聞いてほしいんだ」
強い力で腕を抑えられてしまい、動くこともできないから言われた通り話を聞く体制をとる。
昨日肩を掴まれたときよりは弱くなっていることから、強い力といってもやはり体は消耗しきっていることが伺える。
「…俺、どうしても納得できなくて。
絵心やAちゃんが言ったこと、理解はできるんだけど。
やっぱり俺には今までやってきたサッカーが、こんなにも一瞬で終わっていいものだと思えなくて……」
『うん…。2年間一緒に部活やってきて、吉良君の実力は確かだと思ってるよ。
……正直私も、まさか吉良君が脱落するとは思ってなかった』
そう思ったのは本当だ。慰めのつもりでもなんでもなく。
少し震えている吉良君の肩を優しくさすりながら話しかける。
でも、勝負の世界っていうのは残酷で理不尽だ。
どれだけ練習を頑張っていても、それまでいい成績を残していたとしても、…絶対に負けてはいけない場面っていうのはあって、そこで負けたら終わる。
彼らが目指している勝負の世界はそういう場所。
『吉良君の実力はもちろん一流のものだと思う。
…けど、負けたら終わりの世界、そこで負けたっていうのがげんじ、つ、』
「そうだよね。やっぱりAちゃんもそう思うよね…?
俺は間違ってなんかなかったんだ。俺は一流の選手なんだ。
俺を失格にした絵心や潔君たちの方がよっぽど狂ってる…!!!」
私の言葉を遮って叫ぶ吉良君。
彼の耳には私の言葉なんてぜんぜん入ってきていないみたいだ。
とりあえず落ち着いてもらおうと、背中をさすろうとすると、その手も掴まれた。
「……ねえ、一緒に帰ろうよAちゃん」
686人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
⚽️ - 選手からヒロインへの暴力行為があるのなら先に記入すべきです。そんな描写誰だってびっくりしますよ。 (4月20日 6時) (レス) id: d10d627114 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃる(プロフ) - cocoさん» コメントありがとうございます!不定期更新で申し訳ないです…少しずつ更新してまいりますので、どうぞお付き合いください! (2月6日 0時) (レス) id: 18955f4b71 (このIDを非表示/違反報告)
coco - 更新待ってまる (1月14日 7時) (レス) @page45 id: 5b00a62990 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃる(プロフ) - もこさん» コメントありがとうございます!愛され逆ハーいいですよね、私も大好物ですぐふふ…いろんなキャラと絡めるように頑張りますね! (5月20日 0時) (レス) id: 91d6034ebf (このIDを非表示/違反報告)
ふぃる(プロフ) - あんこさん» コメントありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (5月20日 0時) (レス) id: 91d6034ebf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふぃる | 作成日時:2023年3月24日 14時