雲の上の男 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:724 hit

4 ページ4

私の机でくつろいだように座る男を見上げる。

「あの……」

私が呟くようにそう言うと、その男が目で頷く。

ちゃんと聞いてる、とでもいうような表情。

「どうして私なんですか？」

震える声で疑問を口にする私に、男が微かに笑う。

『決めてた』

一言そう言われても、まったく意味がわからず黙ったままの私。

決めてた？何を？

『この前、女と別れた』

私から視線を外し、そう言いながら教室を見渡し言葉を続ける。

『それから付き合ってもよさそうな女を見つけたら、5人目で声かけるって決めた』

何でもなさそうに軽く言う男は、目の前で長い足を組む。

『何だよ、その意味不明な話』

『なあ、もう帰ろうぜ。付き合うってことでいいんじゃね？』

連れの1人は呆れたように、もう1人は面倒そうに声を出す。

私はまだ名前も知らない男の顔を見つめた。

教室を見渡していた男が私の視線に気づき、机の上から見下ろしてくる。

『どうする？』

軽いのか、そうでもないのかわからない口調。

「断ってもいいんですか？」

恐る恐る聞くと、男が微かに笑う。

『どうかな……。できたら付き合ってほしい』

「できたら？」

『また探すの面倒だしな』

この言葉は軽く言って、突然机から立ち上がる。

『一緒に帰ろう。送ってやるよ』

私の鞄を持ち、廊下へと歩き出す。

ゆったりとした動きで、周囲の視線などまったく気にしない。私はまだ鞄に入れていなかったペンケースを持って、その男のあとについていくしかなく。

完全にパニックになっているものの、鞄を持っていかれたまま放っておくわけにもいかないから。

彼女と別れてから5人目に付き合ってもいいと思われた私。

そんなことを考える人間がいる？

それがたとえ嘘でも、それを付き合う理由にする男。

変わってる……。

廊下を歩きながら、前を歩く男の背中を見つめ、周囲からの好奇の視線をやり過ごす。

『今週絶対来いって、ナムジュンさん言ってたぞ』

『言われなくても行くよな？』

『最近面白くねえ』

『ジョングク、何でお前ってそういうことばっか言うんだよ』

『放っとけよホソク、どうせ行くから』

『今日は寄らねえのか？』

『何で？』

前を歩く3人の男達が口々に話をするのを、後ろからついて歩きながら聞いていた。