雲の上の男 (ページ3)

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6時間目が終わり教室で帰り支度をしていると、廊下がザワザワと騒がしくなり、まだ高校生活に慣れていない1年の教室の前にその男が姿を現した。

正確には男達で、その男とあと2人の男が廊下から私のいる教室を覗き込む。

気崩された制服と、人目を気にすることのない慣れた態度から上級生だとわかる。

本気だったのだろうか？

帰り支度の手を止めて、席に座ったまま慌てて俯く。

どうして私？

サッパリわからない気持ちで、男達が通り過ぎるのを待つ。

『見つけた』

俯いていた私は、思いのほか近い距離からその声に驚いて顔を上げた。

3人の男達が、もう教室の中に入ってきていて逃げられる状況ではない。

微かに笑って私の席に近づいてくる男達を、避けるように道を空けるクラスメイトは、好奇の視線で突然の上級生の訪問を見守っている。

『考えてくれた？』

私に向かってそう言いながら、男が近づいてきた。

金色に見える髪は短く、窓から射す日の光にキラキラと反射する。

細い身体で背が高いためか、座っている私がその男を見上げるだけでも首が疲れるのではないかと、どうでもいいことを考える。

『ふーん、この子』

『地味じゃねえ？』

声をかけてきた男の横で、私を見ながらガッカリした態度を隠さない男2人。

『答えは？』

2人の男達の言葉を無視して、突然目の前の机に腰掛けた男が近い距離で私を覗き込む。

パニックに近い感覚で、冷や汗が出そうになり思わず顔を背け黙っていた。

『怖がってんじゃね』

『やめといてやれよ』

友達らしい2人がそう言っても、またそれを無視する男が私に向かって口を開く。

『名前は？』

やはり軽いのか、そうでもないのかわからない口調で聞いてこられて、思わず男に視線を向けると優しい瞳が私を見ていた。

「Aです……」

『名前、聞いてんだけど』

苗字は名前じゃないの？

よくわからないまま、それでも名前を告げる。

「A……」

消え入りそうな小さな声しか出ていないけれど、男には確かに聞こえたようで早速名前を呼ばれた。

『A、男いるのか』

「いません……」

『マジで大事にしてやる。俺と付き合えよ』