桜の舞う季節【短編集】 (ページ4)

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起きたら、知らない所にいた。

知らない所なのに、誰もいない部屋に違和感を感じて。
手のひらが汗ばんでいないことが不思議で。

ぺたっ…

この胸のもやもやを晴らしたくて、ベットから降りた。

ぺたぺたペた……

誰もいない、広い家。真っ直ぐ伸びる廊下を脇目を振らずに歩く。

いつの間にか、目の前に来ていたドア。
開けようと伸ばした手を引っ込めた。

本当に、開けてしまっていいの？そこに何があるかお前は知らないだろう？

頭の中の自分が、問いかけた。

知らないよ。だって、開けなきゃ何があるか分からない。

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赤い、赤い海が見えた。

『いつもは、綺麗な青なのにね。』

青く、ない。

『あなたの色。』

赤は翔くんの色でしょ。

『智くんは優しいね。』

優しくない。だって、君をたくさん傷つけた

『おかえり智くん。』

穏やかにそう言ってくれる翔くんはもういないの？俺、ちゃんと思い出したよ。『ただいま』の意味。