月夜 百五十五夜目 ページ38
遊作side
LINK VRAINSのリアルタイムな映像が巨大なモニターに映し出されている、パブリックビューイング広場にて。
Cafe Nagiのキッチンカーでは、外に出した看板や机を片付けたり、ゴミを纏めたりと草薙がせっせと閉店作業をしていた。その様子をキッチン内部のチェアに座って眺めているのは藤木遊作である。
「だが、まさか理出亜理子がお前の学校に転入してきたとはな。お前の正体がハノイの騎士に気付かれたのか？」
「いや、奴の口振りではそういうわけではなさそうだったが……」
だが、一応気をつけた方がいいだろう。Playmakerの正体をハノイの騎士に言わない、とLiddell、もとい亜理子は言っていたが、所詮口約束だ。いつ反故にされるかも分からない。
「理出と話すときは気をつけろよ。どこから情報が漏れるかわからない。」
「わかってる。……ところで、草薙さんは何か情報は掴めたか？」
「ん？ああ、そうだな……」
ふむ、と一度作業の手を止めて、草薙は考え込むような仕草を見せる。
「十五夜未月や理出亜理子について調べてみたんだが、あまり詳しい情報は手に入らなくてな。SOLテクノロジーが
Pandoraプロジェクトの被験者情報を念入りに隠しているみたいだ。」
「そうか……」
【ま、あんなに犠牲者出してんだ、それも仕方ねぇと思うけどな】
そんな風にAiが言う。確かに、被害者である6人の少年少女たちは皆無事だったロスト事件と比べ、30人以上の死者を出したPandoraプロジェクト。これ以上の犠牲と情報漏洩を防ぐために、事件に関する情報を秘匿するのは当然といえば当然のことだろう。
「それで？遊作の方はどうだった？なんか情報、手に入ったのか？」
「New Moonから贈られた圧縮ファイルのパスワードがわかったかもしれない」
「お！？本当か！？」
思わずといった様子で、草薙は目を丸くする。
「正確にはまだ断定はできない。だが可能性は高いと俺は考えている。」
先日、SOLテクノロジーのデータを盗みに行き、財前とデュエルをした。あの時NewMoonから「デュエルに勝った事へのご褒美」だと言われ受け取ったのが、鍵のかかった圧縮ファイルであった。
「一応ヒントらしきものは書かれているが……なんの事だか分からなかったんだよな」
妙に硬いセキュリティやら、いやらしいところに組み込まれたトラップのせいで異様に時間がかかったが、なんとかパスワードを入力すれば解凍できるところまでこぎつけた……のだが。
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作者名：瑠伊亞 | 作成日時：2019年5月18日 21時
