月夜 百五十三夜目 ページ36
「……私を捕まえて、どうするつもり」
「勘違いしないでもらいたいな。我々は君を保護したのだ。もしあのまま私がアイツを倒さなければ、お前はアイツをデリートしなければならなかった。お前としても、それは自分の失った記憶を取り戻すのに、不都合だろう」
「あっっっっそ。そんじゃあとりあえず感謝だけは伝えとくわ、ありがと」
それだけ伝えて、目線をリボルバー……鴻上了見から外す。視界の端で小さく溜め息を吐かれたが、気がついていないフリをした
「了見様、後は私が」
「……ああ、頼んだ。ドクター滝」
今度は滝、と呼ばれた赤い髪の女医が、ベッドの近くにあった丸椅子を引いて、私の枕元に座る
「初めまして、浅葱未月さん」
「……」
「名前を教えた覚えはないのに、なんで知ってるのか、って顔ね。私の名前は滝響子。リアルではDen cityの病院で、医師をしているわ。」
「ハッキングでもして取ってきたの？プライバシーのカケラもないのね」
「それをあなたが言うの？早速で悪いけれど、まずはあなたの健康状態を知りたいの。医務室に案内するわね」
「……別にいい」
「此方は良くないわ。病人を看護するのは医者の役目よ」
「誰が病人よ！！私は別に病気とかじゃ……ッ！！」
滝さんの言葉が自分をバカにしてるように聞こえて、思わず起き上がる。だがすぐさま訪れたフラッシュバックから来る頭を強く殴られるような痛みに頭を抑えた
「……ログインして倒れていた貴方を部屋で見つけた時。顔色は真っ青で、抱き上げたら紙みたいに軽かった。キッチンも覗かせてもらったけど、冷蔵庫には麦茶とホットドッグと炭酸水、大量のコーヒー缶とエナドリ。棚には大量の栄養サプリメント。貴方、早ﾀﾋにしたいの？栄養バランスを考えて、好き嫌いしないで食事を取りなさい」
「うっっっっせ！！！アンタは私の先生か！！！！！」
「先生よ」
「ちくしょう言い返せねぇ！……ッ！！」
「あまり叫ばない方がいいぞ。痛みが酷くなるだけだ」
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作者名：瑠伊亞 | 作成日時：2019年5月18日 21時
