〜昔話 『女の子と希望とお伽噺』〜 ページ30
同じ小児病棟に入院していた女の子二人を巻き込んで、少女は空想を続けた。もし私が「主人公」だったら……もしも、私の目の前に、本当に大きさを変えられるケーキやドリンクがあったら……とかね。
え？馬鹿じゃないのかって？まあまあ、まだその子だって子供だったし、それくらいは皆したでしょ？え？しなかった？うっそだー。絶対皆一度はしたって。じゃなきゃ「夢女子」なんつー者達は現れない。この文章を掲載したサイトだって……おっと、これはメタ過ぎたね。よしよし、消される前に続きを書こう。
まあ、そんな空想を友達二人と続けていた頃。ある日、少女は夢を見た。自分が、例の「赤い女」になって、人を次々と機械的に裁いて、首をはねさせる夢。皆が「赤の女王は恐ろしい」だとか「あれもこれも、全てアリスの性だ」だとか「アリス、どうして赤の女王になんか！」だとかほざきやがる。そして極めつけは、6/9と書かれた値札が付けっぱなしのシルクハットを被った男のこんな言葉。
「アリスはどうしてあんなのに変わってしまったんだ。どうしてアリスは現実を見てくれないんだ！」
……いやいや、この時点で可笑しいじゃん。ナンセンスを大事にし、答えの無い謎なぞをふっかけ、無い筈のワインを勧め、なんでもない日をお祝いする帽子屋さんが、現実を見ろ、だなんていう筈無いよね？この夢はKさんことクズパパさんが無理矢理彼女の脳に見せた夢幻。
……そう、例の実験の被験者だったんだな、彼女は。まあ彼女にはその自覚は今もないみたいだし、クズパパは何も言わずに参加させてたんだと思うよ。ただのクズだね！
でも、彼女はどうやらその悪夢を引きずってしまったようで。折角仲良くなった友達二人とも別れて、一人で個室に籠るようになった。童話の読み聞かせをねだることもなくなり、妄想も止めるようになった。
……因みに、その二人のお友達なんだけど。二人とも彼女の事をすっかり忘れてしまったみたいだ。最低だね！片方は死んじゃってるらしいから、今度もう片方と会ったら片方のいるところに送ってあげよう！逝ってらっしゃい！戻ってくんなよ！
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作者名：瑠伊亞 | 作成日時：2019年5月18日 21時
