【遊戯王VRAINS】闇に紛れた月Ⅳ (ページ29)

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～昔話　『女の子と希望とお伽噺』～ページ29

さあさこの前の昔話の続きだよ！全員集合！

話は変わるけど、そのKさん、娘居たんだよ。その娘さん、めったくそ可愛くて、優しくて、「天使」と言っても変わりないくらい可愛い女の子でね！？
いやー、クズ家庭に優しい子供が生まれて優しい家庭にクズな子供が生まれるなんてこの世はホント不公平だよね！

……その女の子の愛読書はとある童話だった。彼女はよく、しつけ親であった、とても優しい父の女部下に読み聞かせをねだっていたそうだよ。女の子がある日、洋服を着、時計を持ち、「遅刻だ遅刻だ」と人の言葉を呟きながら草原を走るウサギを見つけ、追いかけた果てにウサギ穴に落ちて不思議な国にたどり着く、という摩訶不思議なナンセンス極まりない童話のね。

そしてその中に出てくる摩訶不思議な仲間達の中でも特にお気に入りだったのが、件のウサギを追いかけて不思議の国にたどり着いた、自身と同じ名前を持つ主人公だった。
自身の名前と同じなのを知って好きになったのか、それとも偶々好きなキャラクターが自分と同じ名前だったのかは知らない。でも、親にも愛されず、いつも小児病棟で一人きりだった彼女にとって、不思議な国で不思議な仲間達と冒険する「主人公」が、特別な存在だったのは確かだ。ありふれた言葉で表現するなら、「希望」って奴なのかな？

でも、彼女にだって好き嫌いがある。
彼女はどうしても許せなかったようだ。
「主人公」の邪魔をし、非現実的な夢の世界から「主人公」を現実に戻してしまった原因を作った「ある女」。夢見る少女から、現実的な大人へと「主人公」を戻してしまった「赤の女王」が。

勿論、彼女にだって分かっていた筈だ。「その女」も摩訶不思議な世界を生きるナンセンスな仲間達も、いやそもそもその世界を冒険した「主人公」も、とある数学者兼写真家が、ピクニックの際に三人の少女達からせがまれて語った、即興の物語の中で生きる登場人物。物語の中でしか生きられない、架空の人物達だということを。
しかし、少女の空想力というのは侮れないものだ。……少女は淋しさと退屈さで、思わず考えてしまったのさ。「主人公」ではなく、自分自身が不思議な国を冒険する、という「夢物語」をね。