夢ならば

面影を探す【side:Hiroya.S】 ページ28

インベスターZとチアダンの撮影の合間にAの病院へ通う毎日
目が回りきるほど忙しいけれどAとの時間はかけがえのないものだ

頻繁には来ないで、とは言われたもののかなりの頻度で通ってると思う
それでもAは何も言わずに迎えてくれる

俺の前では笑ってるし、自分の死を自虐ネタにするような奴だけど本当は心細くてたまらないんだろう
物心ついた時から隣にいて、写真にはほぼ必ず写ってるようなあいつが死ぬなんて未だに実感がわかない



すず｢ねぇ、｣
チアダンの撮影が終わり、秒速で楽屋を出るとまだ衣装に身を包んだすずがいた
すず｢Aがどこにいるかほんとは知ってるんじゃないの？｣
｢は？｣

呼び止められたと思ったら、予想だにしていなかった投げかけに間抜けな声が出る
こんな鋭いやつだったか、と失礼なことが頭をよぎったのは不可抗力だと思う

すず｢ちはやふるとかanoneの時は終わっても他の人と喋ったりしてたのにすぐに帰ってるから、Aのところに通ってるんじゃないかって思って｣

あぁ、みんな必死にAを探してるんだ
真剣な目で訴えてくるすずにAの現状を言ってしまいたくなる

でもAはそんなこと望んでないから
Aの決断を邪魔することはしたくないから
せめて生きているうちは全ての願いを叶えてあげたくて
ごめん、すず
Aを守るという俺のエゴで俺は嘘を吐く

｢俺も知らない
探してるけどあいつが親に教えてるわけないから全然見つからないし、電話も多分着拒されてて繋がらない｣

すず｢そっ、か
ごめん、責めるみたいに言って

私ね、Aに伝えてないこととか、一緒にしたいこととかたくさんあって、それにAが何も言わずにいなくなるなんて余程なにかあったんだと思ってて
だから、もしAが困ってるなら助けてあげたいし、1人だと思ってるなら1人じゃないよって言って抱きしめたいの｣

私だけじゃない、多分みんなそういう気持ちで探してると思う、と締め括ったすずにふつふつと罪悪感が湧き上がる
Aが聞いたら泣くんだろうな

｢俺は、幼馴染にくらい言えよって言ってやりたいけどな｣
すず｢あとまっけんにもね｣
くすっと笑ってすずは撮影に戻っていった


なぁ、A
お前はお前が思うよりずっとずっと愛されてるよ

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