七十二、背反 ページ28
「漸く判ったようだね」
……そうだ、その通りだ。
わたしだって、『治の隣に立つために』、他を排除する代わり、自分の選択の自由を排除した異常者だ。
おかしいのはわたしだって同じだった。それに気がついていないだなんて。
そしてわたしはそれを、苦にすら思っていなかった____。
「……っふ、あはは」
「A、」
……ああ、我ながらものすごく気持ち悪いな。
『自分の死』を犠牲にしてまで助けてくれた治のために口に出すことなど到底出来ないが、
……矢張り穢れたわたしはあの時死んでおくべきだったのだ。そうすれば何も知らないままで居られたのに。
普通の人間として、終われたのに。
「治君、A。2人は互いにとって、互いになくてはならない存在だ。経緯がどうあれ、それが事実だ。
そしてA、お前は孤独な、そして最愛の幼なじみの隣に立つということが『最優先事項』であり、
そして治君、君の場合は、幼い頃から側にいたAの“幸せ”が君にとっての優先すべきものだろう。
____だが治君。君は自分がAの『隣に立つ』のは、Aが、本当の意味で“幸せ”にはならないと考えているんだろう」
わたしはばっ、と顔を上げた。……そして横にいる治の顔を見上げた。
しかし治は冷たい瞳のまま“崎見修治”を見据えており、何か言葉を返す素振りは見せない。
「何故なら君は世界を望んでいないからだ。そして世界に望まれていないと考えているからだ。
君の『最優先事項』は、早く世界に見切りをつけ、この世から去ってしまうことだからだ」
「……!!」
そうだ。治は。……孤独なんだ。わたしなんかより、ずっとずっと。
この酸化した世界で。そういうように見えてしまう世界で。暗い闇の中で、ずっと独り。
「……しかし矢張り違う。君はこの上なく素晴らしい頭脳を持っていながら、Aの気持ちは正しく理解出来ていなかったようだ。
近くに居すぎたからだろうな。
……私が近くに居ることに感づき、『結婚の約束』という名目の上でAを『真実』から守ろうとしたのだろうが、それは“正解”ではない」
「っ、」
「……Aの“幸せ”は、君抜きではありえない」
____ああ、そうか。
わたしの『最優先』と治の『最優先』は、徹底的にすれ違っているのか。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時