七十、“娘” ページ26
治は矢張り、何も云わなかった。そしてわたしも何も云わなかった。……云えなかった。
代わりに、彼が口を開く。治を見て、薄く微笑い、「……君は一つ勘違いをしている」と。
「君は、君と私が似ていると考えているかもしれないが、それは間違いだ。
私は君とは違う。……卓越した予測能力、悪魔的な頭脳を持つ君とは違い、私の描いた脚本には、イレギュラーばかり起きた。
私は今まで、失敗ばかりしてきたんだ」
「……その失敗というのは、【パンドラの匣】の開発失敗……それから、七年前のAに殺された、という所でしょう」
「其れもそうだが其れだけではない」
父はみたび笑った。空虚な笑みだった。
最早生者のものではない、何も映さない磨り硝子のような瞳のままで。
……彼はわたしの父親と、同一の記憶と性格を持つ＿＿整形により姿は違うが＿＿スワンプマンだ。
泥から生まれた、もう1人の父。
彼は果たして、わたしの父と同一人物なのか。それとも同じ人格と記憶を持つ別人なのか。だからこそ、彼はわたしの知る父とは違うのか。
親子三人で暮らした、本当に幼い頃の幸せな記憶は、全て父が演じたものだったのか。
「治君、A。君達には信じ難いことだろうが、私はとても娘を、Aを愛している。
娘の“真の望み”の為ならば、他の有象無象など捨て置くことが出来る」
「……莫迦なことを。Aは貴方を殺した記憶を全て忘れ去ってしまう程、あの時のことに衝撃を受けていた。
Aが貴方を殺したことも、おばさんを貴方が殺したことも、貴方がAを使って人体実験をし、権力者達が欲しがる異能をその身に宿させたことすら……有象無象だと云うと？」
「＿＿＿＿そうだとも」
……嗚呼、駄目だ。矢張りここに、わたしの“父”はもう居ないのだ。いや、わたしの“父”など最早最初から居なかったのだ。
わたしは“父”の……いや、『崎見修治』を胡乱な目で見上げた。
……わたしが父を殺したことも、父がわたしを殺したことも、全てがどうでもいいことだと？
それ程までに、わたしが何かを望んでいたと？
人を大量に殺し、娘を操り、それでもそれを、わたしの為だと云うのか。
「おかしいと思うか？ ……ああ、確かに私は歪だ。普通ではなく、歪んでいる。
それは理解しているが……だが、歪なのは、普通でないのは、お前だって同じだろう、A。
お前は娘なのだから」
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの２作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (
レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか？ (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます！！設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです！！ (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…！！ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……！！主人公がやばくてすみません……！こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました！！コメントすごく嬉しかったです…！ (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sunny
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2018年9月7日 14時
