六十五、答え合わせ ページ21
*
____わたしは、わたしを、赦してはならない。
絶対にだ。それだけの罪を犯した。
わたしの手は、名前だけの正義であっても、それに触れてはならないほどに、穢れていたんだ。
きっとそこには理由があった。多分その時のわたしには、わたしの手を汚すだけの理由があった。
……でも、それでも。わたしのしたことは、誰にも赦されてはいけない。
嗚呼、ああ、今なら判る。……治は、誰よりも頭の切れるわたしの幼なじみは、これを隠すために動いていた。
他の誰でもないわたしのために、真実を隠そうとして。
『津島検事
支部長に資料を届けてくるように頼まれましたので、今からそちらにおうかがいします。
これは私個人の見解ではありますが、支部長も恐らく、あなたのことを心配して私に頼んだのでしょう。一寸したお土産も持っていきます。
崎見』
携帯端末に届いた、簡潔なメッセージ。それを見てわたしは苦笑すると、「わかりました」とだけ書いて送信した。
……ああ、全く、おかしい。
病人のもとにわざわざ資料を持ってくる人間がどこにいる?
支部長がわたしを心配しているから事務官が検事の見舞いに行け? そんな仕事場があるか。
彼らは、わたしがそろそろ『自分の罪』に気づいただろうと予想を立てているんだ……いや、そもそも、断られることを想定していないんだ。
____わたしの『元』父、崎見修治こと元【匣】の班長。
____そして、父の右腕だった、【匣】の副班長……青山光二。
……ああ、それにしても、気づいてしまえばこんなに簡単なことだったなんて。
情報が世界を制す。その格言は実に的を射ていると思う。
「青山さん。青山支部長。……彼の名前を思い出した。
そう、お父さんが、自分の助手だと、かつて紹介してくれたことがあった____」
真逆、本名で、顔も変えずに、わたしの前に現れるとは。
……いや、わたしが記憶を失い、ポートマフィアに居たことを知っていたからこそ、堂々とわたしの前に居られたんだ。
『犯人』であった彼らの前で、奔走するわたしはさぞ滑稽だったことだろう。
____ピンポーン……
チャイムが鳴り、わたしは手にした携帯端末を机に置いた。
玄関の扉は開かないが、恐らく彼はそれをあっさりと開けてしまうだろう。
わたしの不審感なんて関係ないのだ。
これは『答え合わせ』であり。
『罪の清算』なのだから。
450人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時