五十七、悔しい ページ13
差し込んできた朝日に、目が覚めた。
ゆっくりと目を開けてみると、わたしは何故か部屋着を纏ったままベッドの上にいた。
……近くに治の姿はない。昨日のことは夢だったんだろうか。
仮にあれら全て夢だとしたら、わたしは昨夜スーツのままベッドに身を投げ出したはず。それがおかしい。
……と、まあ、何故か着替えているのは不可解だが、とっととスーツに着替えて出勤しなくては。
折角中原さんが情報をくれたんだし、異能連続殺人事件の解決と、治の秘密について、最後まで調べなくちゃ。
「……あれ?」
ベッドから降りて、寝室から出て、居間に入ると……とあることに気がついた。
それが何であるかは至極単純。見れば判るが信じたくないもの。
そして、昨晩の出来事が、全て実際に起こった真実であったと証明するもの。
「嘘だよね……?」
ふざけんな了承した覚えはねえよ!!
わたしはそう叫び、
中に入っていたのは……台座の上に鎮座している、美しくカットされたダイヤモンドの指輪。
要するに。
_____
「冗談じゃないってば……」
夢ではなかった、と正しく現実を認識したわたしは、頭痛に頭をおさえた。
暗い部屋の中、『閉じ込めるしかなくなってしまうのだよ』____幼なじみに向かってそんなことを抜かした野郎の顔を思い出す。
向けられたのは、闇を孕んだ瞳。同時に喪失を畏れる眸。
……治は、本気で、わたしに『秘密』を知られたくないらしい。
「スマホ……あるわけないよね」
たまに失念してしまうこともあるが、彼奴は元マフィア、それも稀有な才能を持った『裏社会に生きているべき人間』だ。
彼奴が『閉じ込める』というなら本当にそうなるのだ。当然連絡手段は絶たれるだろう……固定電話も同様、電話線がどこかに消えている筈だ。
恐らく、少なくとも____今回の事件が迷宮入りになり、【匣】の情報が彼奴の手によって完全に削除されるまでは、
わたしはこの部屋から誰かに何かを連絡することは出来ない。
「ううう、くっそ……」
彼奴のことだから、職場にもきっとちゃんと連絡を入れているだろう。わたしは恐らく体調不良になっている筈だ。
……追いつけやしない背中。わたしは悔しくて、血が滲むほどに唇を噛み締める。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時