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死柄木side
ガリ、と死柄木は首筋を掻いた。
目の前には、小さなスピーカー。
先程からノイズの発するそれを一心に見詰めていた。
死柄木は事前に、
彼女の着る服に発信器と盗聴器を縫い付けていた。
それは彼女が逃げた場合、警察やヒーローに連絡した場合に、すぐに分かるようにかけた保険だった。
バーの中身はめちゃくちゃだった。
床にはグラスの破片が散らばり、
椅子や過敏は床に倒され無惨に転がっていた。
なんで、どうしてと荒れる死柄木を、
誰も止めなかった。
トガがAの状況を報告し、
逃げた訳では無いとわかった後でさえも、
死柄木の気は休まらなかった。
気の向くままに暴れた後、
盗聴器の存在を初めて思い出し、
嘘のように静かに、死柄木はスピーカーを見詰めていた。
怒りの後にくるのは、罪悪感だった。
今日、彼女とずっと一緒に居れば。
そもそも機嫌の悪い日に、出かけなければ。
だが死柄木は、
自分に落ち度があることを認めたくなかった。
自ら手放したということを、認めるのと同じだから。
スピーカーから漏れ出る音声は、
彼女と死柄木と別れた時間に遡る。
彼女がお礼を言いながら商品を受け取った時、
明らかな男の声がして、思わず首筋を掻く。
彼女の声はか細くて、弱々しい。
ガリ、と掻き続けた。
彼女に一方的に話す男の声が、耳障りだった。
そしてサイレンの音。
警官の声。
けたましく鳴る雑音に、思わず顔を歪めていた。
その中で、か細く弱い声が、死柄木の耳に届いた。
『帰りたい』
こどものように泣きながら、震えた声。
聞き逃してしまう程、消えそうな声だった。
死柄木はスピーカーを弄って、また再生した。
『帰りたい』
何度も何度も再生した。
側に彼女にしきりに声を掛ける男の声があっても。
ヒーローや警官の耳障りな騒音が響いていても。
その言葉を聞くために。
『帰りたい』『帰りたい』『帰りたい』
何度も何度も何度も何度も何度も再生した。
不快さでいっぱいだった死柄木の頭は、
別の感情で支配された。
嬉しい。
彼女が、自分のところに戻りたがっている。
そのためにぼろぼろと涙を溢していたのかと思うと、たまらなく愛おしい。
ああ、やっとだ。
歓喜に震える。
彼女はぜんぶ、俺のものになった。
泣きじゃくる彼女の声が愛しくて、
スピーカーにうっとりと呟く。
「だいじょうぶだよ、
俺が、絶対迎えに行ってやるから」
死柄木は、微笑んでいた。
「愛してるよ」
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華羅夢(プロフ) - ぽいぽいさん» 何ですって！！ぜひ死柄木くん推しになってくださいな！！彼は魅力的な男です！！コメント嬉しいですありがとうございます････！ (2021年9月19日 8時) (
レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - この作品で死柄木くん推しに傾きつつある…好きです応援してます頑張ってください!（ノンブレス） (2021年9月19日 7時) (レス) id: 1142a6ee8a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - れのまるさん» うわああありがとうございます･･････！コメントが1番のモチベになるのですごく嬉しいです！頑張りますね！ (2021年9月14日 14時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
れのまる - 死柄木さん最推しなのでこの作品めっちゃ好きです…！これからも応援してます！ (2021年9月14日 7時) (レス) id: ce403bbca4 (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - しいたけさん» しいたけさん、もしかしなくても2回目のコメントですか･････････？コメント来るのが1番嬉しいので、大喜びで話を書いてしまいました！楽しんで頂けて何よりです！！ありがとうございます！ (2021年9月11日 10時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年8月23日 1時
