6話 ページ9
見捨てろ
そう言って去っていく蛇神の背中を桜神は泣きじゃくる少女の背中を擦りながら見つめた
「.......どうしてなんでしょう。たすけたのは せなさん ごししん の はずなのに。」
そんな事が口をついて出るが、今1番困っているのはなかなか泣き止まない少女の事だった
「そんなに なかないで」
そう声をかけてみるも少女は聞こえていないかのように泣きじゃくる
背中をさすってあげることしか出来ない桜神はどこかもどかしかった。
「どうすれば いいんでしょう.......」
蛇神は自分の泉に帰ってしまった。その挙句、見捨てろとまで言われたのだ。
わざわざ呼び出して泣き止ませろ、なんて聞き入れてくれるわけがない。
でももう自分一人では手詰まりだった。
"人間"を初めて見た桜神には、人間がなにを見て、聞いて、喜びを感じることが出来るのか。それさえも知り得ないのに泣き止ますなど、到底不可能だった。
増してやずっと虐げられてきた少女に喜びの機能すら働いているのかすら分からないのに。
ただ出来るのは自分が泣いた時に慰めようとして背中をさすってくれたあの神様のように少女に接するしかなかった。
隣でいつも歌って笑って。気がつくともう隣にいないあの自由で優しい神のように。
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作者名:ゆなり | 作成日時:2019年6月4日 22時