13,苦笑。 ページ15
・
男はしばらく黙っていた。
Aも同様、黙っていた。
自分が美しいと言われたのは理解しているのだが、聞きなれない「心中」という言葉。
「君、名前は?」
『相手に名前を聞くんだったら自分から言ったらどうだ』
「太宰治」
あっさりと名乗る、太宰。
そしてAは少し間を置き、太宰から少し離れて言った。
『…知らない人に名前教えたらダメってこの前クソ上司に言われた』
この場合の「クソ上司」はおそらく中也のことだろう。
口は悪いものの、別にAは中也が嫌いなわけではない。
「知らない人?私はもう名乗ったから知らない人ではない筈」
『ああ、そうかっ』
Aは少し感心したように言った。
先刻までの警戒は何処に行ったのか。
『Aさんは紅葉Aだ!』
一人称__Aさん。
太宰は呆れた様子を一瞬見せたが、Aは気づかなかった。
「いやァ……これも運命か何かかなあ」
『なにゆえ?』
Aは改めて太宰を見た。
腕に巻いてある包帯が何故か少し不思議だった。
「実は今日、ある人に興味がわいて町を歩いていたんだ」
『その人がAさんだったのか』
「ご名答」
太宰は笑顔で言った。
Aは誇らしげにフン、と鼻をならして胸を張った。
『なんで?』
「この前裏社会の人間だけ参加のパーティーがあっただろう?」
『………………何で知ってるの』
Aが間をあけていった。
しかし太宰は苦笑するばかりで、話を続けた。
「それでね、君に一目惚れした人がいたらしくって、人探しと命名した依頼を受けたのさ」
『おじさんも裏社会の人なのー?』
「…今のはちょっと怒るよ?」
『……お兄さんも裏社会の人なのー?』
いつもの減らず口で喋ると相手は不快な思いをする。
よく中也に言われたものだ、とAは思った。
太宰は少し笑ってから、
「元、ね」
と言った。
*
221人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
芥川様LOVE - 芥川様可愛い好き作者様有難う御座います一生付いていきます (2019年11月16日 14時) (レス) id: 40c6fc2ce8 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわ とまと - 銀色ミカンさん» ありがとうございます!!新作もちまちま更新頑張っているので! (2016年12月1日 23時) (レス) id: ac53bb1069 (このIDを非表示/違反報告)
銀色ミカン - 笑いながら読みました。とまとさんの書く芥川かわいいです! (2016年12月1日 17時) (レス) id: 8b3f2e95f6 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわ とまと - あんこさん» 貴方とは話が合いそうですね((キリッ。ありがとうございます!!私はやつがれ小説製造気なので、また新しい作品作りました!ぜひ読んでみてください! (2016年11月29日 22時) (レス) id: ac53bb1069 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - うわあああああんめっちゃ可愛いですうううううう!!!私やつがれ大好きでほんとこんなやつがれちゃんも愛しい…!やつがれちゃんは神と言えるほどのガチ勢で御座います!← もうほんとうへへへって言いながら見てました可愛い無理…ありがとうございます… (2016年11月27日 6時) (レス) id: dcde93e978 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ