参拾壱 ページ32
さてと、小瓶もこれくらい増やしておけば問題ないだろう。
にしても、義勇は何処に行ったんだ。
そんな事を思っていると、頭の中に声が響く。
俺の名を呼ぶ、切ない声。
………… 全く、また貴方はそうやって涙を流しているのですか。
そんな声を聴いたら、俺の心も苦しいよ。
でも、俺は貴方の元へは行けない。
だって、逢いに行ってしまったら、今度こそ貴方は俺がどこにも逃げないように閉じ込めてしまうだろうから。
それは、とても困る。
俺には、不安定でどうしようもなく目が離せない可愛い【弟】が居る。
……………… 蔦子が居なくなって、あいつには寂しい思いをさせてばかりだ。
……………… いや、そんな時に家を空けて【恋人】と愉しく遊んでいた俺が言える義理はないな。
気が付いたら、あいつは鬼を殺す力を手に入れた。
久しぶりに再会した時のあいつ。昔の可愛かった頃とは比べ物にならないくらい感情が乏しくなっていた。
俺に対しても、周りの人間に対しても。
まあ、俺に対して無機質なのは、きっと蔦子が死んだ時に家に戻らなかったらだろう。
あいつは、俺を恨んでるんだ。
それは、十分理解してるつもりだ。
だけど、たとえ恨まれていたとしても、あの子は俺の弟だ。
今更兄貴面なんて、する権利も無いだろうが、それでもたった一人の家族なんだ。
これ以上、あの子に嫌われたり、恨まれたりするのは御免だよ。
だから、まだあなたの傍には行けないよ。
そんなことを考えていると、突然辺りから【血の香り】がした。
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作者名:アルビリオン | 作成日時:2020年4月17日 10時