弐 ページ3
蝶屋敷の中に入ると、相変わらず胡散臭い笑顔の胡蝶様がいらっしゃる。
しのぶ「おや、おはようございます熾勇君。」
そう言いながら僕の頭を撫でようと手を伸ばしてくる。
僕はそれを避けながら療養中の隊員たちの朝食を作りに台所へと向かう。
しのぶ「あらあら、今日も一段と機嫌が悪いみたいですね。
そんなに冨岡さんと離れたくないのかしら。」
胡蝶様にも仕事があるはずなのに、何故か僕の周りを彷徨く。
熾勇「…… 胡蝶様、御自身のやるべき事をして下さい。
それに、料理中に傍に来られると邪魔です。」
回りくどい言い方をせず、ハッキリと伝えているはずなのに、胡蝶様は僕の傍から離れない。
しのぶ「ふふ、熾勇君は冨岡さんと違って愛嬌があるからかしら。
悪態をついていても可愛いわ。」
包丁を扱っている僕の隣に寄り添うように身を寄せて来る。
熾勇「…… 危ないです。誤って刺されても文句は言えませんからね。」
しのぶ「あら、そんな事を冨岡さんが知ったら嫌われてしまいますよ?」
そう言って優位にたったような顔を一瞬見せる。
面倒だな。
そう思っていると、神崎様が出来上がった料理を運びに来た。
アオイ「あれ、しのぶ様?こんな所で何を……
って、また熾勇さんの邪魔ですか?!ダメですよ!お仕事に戻ってください!」
そう言って、神崎様は胡蝶様を台所から追い出してくれた。
アオイ「全く、しのぶ様はいつも熾勇さんにくっつくんだから……
ごめんなさい。これ、運んでも良いですか?」
何故か申し訳なさそうな顔をする神崎様に、僕は微笑んだ。
熾勇「あとで、団子をお持ちしますね。」
神崎様は、胡蝶様の奇行を止めてくれる頼もしい人。
なので、僕はお礼に必ず団子を作る。
神崎様は僕の作るみたらし団子が好きらしい。
少し嬉しそうな足取りで、神崎様は料理を運んでいった。
束の間の一人の時間で、僕は大きなため息をついた。
兄様の今回の任務。特定の鬼を倒すまでずっと家には帰らないらしい。
最近、兄様との時間がどんどん短くなっていく。
まるで、誰かに邪魔をされている気分だ。
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作者名:アルビリオン | 作成日時:2020年4月17日 10時