兵庫水軍と犬夜叉異聞路続編

不気味な顔の女(2) ページ43

虎若は受け取ると、笑顔で言った。

虎若「可愛い。有難う御座います。じゃあ僕は行きます。さよなら、気を付けて。」

女？は笑顔を浮かべて頷いた。虎若が去った後、女？はクスクスと含み笑いを始めた。

女？「しめしめ、上手くいった。犬夜叉どもめ。目に物見せてくれる！かぐや様に蘇らせて頂いたご恩は必ず果たす。妾が造り出した妖怪の力…、見るが良いわ！」

女？の顔には、能面にある傷と同じ傷が浮かんでいた。

虎若は学園に着き、忍服に着替えると、市松人形を手に歩いていた。

仙蔵「ん？虎若、その市松人形は如何したのだ？見せてみろ。」

虎若「あっ、立花先輩。父上に用事があって外出した帰りに、足を挫いてた女の人を助けたお礼に貰ったんです。手習いだって言ってました。人形師の卵じゃないですかね。」

仙蔵「そうなのか、ほう。中々良く出来ているな。可愛らしい人形だ。ん…？何だ？手にしている鞠(まり)に、何か入っている。なんだこれは…？ああ、童歌か。洒落た遊び心だな。」

虎若「童歌？どんな唄ですか？」

仙蔵「聞きたいのか？童歌は色々ある。楽しい唄や怖ろしげな唄、戒めを込めた唄や、慰めの哀しげな歌もある。幼子に人の心を問う唄なのだ。今読んでやる。」

仙蔵「にんぎょう〜にんぎょう〜鬼と聞け〜

宵の曙やも知れぬ〜

群上洛の憚らん〜。

にんぎょう〜にんぎょう〜闇と泣け〜

舞し宴のこも遊び〜

おはじき宿れり乳母と盆〜

にんぎょう〜にんぎょう〜鬼と闇〜

同じいろはを抜き解きし〜

鳴かぬ丹頂肉で飽き〜。」

歌い終えた途端、仙蔵の躰に一瞬微かな痺れが走った。仙蔵は気付いてはいない。

虎若「…？何か暗号みたいな歌詞ですね。」

仙蔵「そうか？考えすぎだろう。まさかこれをお前にくれた女人が何処ぞの間者等という訳でも在るまいし。幾ら私達が忍たまでも、人の善意を疑うような真似は失礼だぞ。ほら、この子は返す。」

虎若「そうですね。じゃあ僕乱太郎に用がありますから失礼します。」

見送った仙蔵の眼に不気味な紅い光が浮かんでいた。

仙蔵はその足で自分の部屋に戻る。中には文次郎が居た。

潮江「おう。仙蔵早かったな。この後鍛練に行くんだが、良ければ一緒に…、ん？何だ。如何した仙蔵？」

仙蔵は答えず、文次郎に近寄ると文次郎の腕を掴む。そのまま徐々に力を強めてくる。

潮江「お、おい、痛いじゃないか仙蔵！離せよ！…っ！？お、お前…！如何したんだよ！」

次の瞬間文次郎の躰は痺れ、声も無く倒れた。

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