【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ16)

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「うらさんが女子は男子の水着姿見るとドキッとするって言ってたから着てきたんやけど……なんかいざ海に来て急に自信なくなったんよ」

「その子にドキッとしてもらえるか、ってこと？」

「う、うん……」

ぎこちなく頷くと、坂田くんは服を脱ぎ始めた。確かにしっかりと水着は履いている。
少し割れた腹筋に「おぉ」なんて思いながら、彼の顔を見ればほんのりと赤らんでいた。

海の方へ行くのかと思いきや、私の隣に座る。
体育座りをして前で腕を組んだら、私の方をゆっくりと見てきた。

「心臓ドキドキする？」

「う、うーん…どうだろ」

「そっか…」

先程とは一転、萎れた表情を見せ、私から目線を逸らした。
はぁ、というため息は落ち込んでいるようにしか聞いてとれない。

「俺、Aに少しでも意識されたくて、頑張って筋ト…………

レ、はしてないね、うん！！なんとなく鍛えてたんだけど、あんまり意味なくて…！さ……」

必死に両手を左右に振る坂田くん。
後にうまく濁していたけれど、それでも私にとっては心臓を射抜く十分な矢であった。

「そ、そっか………」小さくなってしまった返事は、近い距離にいる坂田くんにしか聞こえなかったらしい。
組む腕に力を込める。

「…………あっあのね、坂田くん」

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