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"「 ここ、夕方なったら凄い綺麗やねん。それ見てほしいな、と思って 」"


────そんな志麻くんの言葉が頭から離れず、あっという間に夕方。なんて、いうか……、態々私のために連れてきてくれたのかな、とか。自意識過剰もいい所だが、そう思ってしまう。そしてそう思ってしまえば、異常なくらい心臓がドキドキと高鳴って、正直海を楽しむ!という感じではなかった。なら楽しくなかったのか、と聞かれるとそういう訳ではないが。

海で沢山遊んだ後だから髪の毛は勿論濡れていて。それが妙に志麻くんを色っぽく見せていた。……とか、こんな事思ったら変態って言われるかもしれないが。水も滴るいい男、と言えばいいのだろうか。本当にそんな感じである。思わず見惚れていればそんな私の視線に気付いたのか、少し にやり としながら「 何?そんなに俺の事好きなん? 」なんて。


「 ……からかうのもいい加減にしなさい 」
「 ごめんごめん。いやあ、だってちょっとその拗ねたような感じが可愛くて、つい 」


笑いながらそんなことを言ってくるあたり、反省していないのだろう。なんていうか、私ばっかりどきどきさせられているみたいで気に食わない。私だって志麻くんを、……って、カレカノでもないのに何を思っているんだか。…でも、まあ、少しくらいそんな事しようとしてもバチは当たらないだろう。


「 …もしも、」
「 ん? 」
「 もしも、さっき本当に志麻くんに見惚れてたとしたらどうする? 」


私がそんなこと言えば二人の間に沈黙が流れる。あ、やばい。これは流石にやりすぎたか、なんて思い笑って誤魔化そうとしたその時、志麻くんに腕を掴まれ、思いっきり振り向かされる。つまりは、私と志麻くんが向き合うような形になって。


「 ……し、まくん…………? 」
「 もしも 」

「 もしもほんまに見惚れてたんやとしたら、もっと見惚れてほしい 」


真剣な顔で、そんな事を言ってくる志麻くん。冗談なのか、否か。よく分からないからからかわないでよ、とも言えなくて。

「 ……な、んで、」
「 なんで、って 」

「 ────ずっとAの事好きやったから、じゃあかん? 」

俯いていた私の顔を覗き込むような形でそんな事を聞いてくる志麻くん。彼の瞳に映る私の頬は紅く染まっていて。


「 ……嫌、やったら後で殴ってくれていいから 」


そう言って、近かった志麻くんの顔がさらに近くなる。志麻くんとの距離が0になるまで、あと数秒。


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作者名:高瀬その | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2018年6月26日 21時

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