3話 ページ5
先程外を歩いていた時と違い、至るところから視線を感じる。
向かいから歩いてきた人も私の姿を見ると、振り返り、二度見3度見された。
何だ、私の顔に何か付いているのか...そうだ、ついているのである。
私の職業は自分の素性をうまく隠す必要がある仕事だ。敵に出会った時も襲われないよう、身元がバレない様に素顔や性格すら隠さなければいけない。
町の人々が私を振り返るのも当然だろう。
...誰だって、こんな"仮面"をつけていたら不思議に思うよ...。
そりゃ振り返りたくもなるよね、ごめんなさいねと内心謝りながらも私は道を進んだ。
「...万事屋銀ちゃん...」
そう書かれた看板の前で立ち往生する。
もし経営しているやつらが攘夷浪士だった場合、私の噂はすごいハイスピードで広がることになるだろう。それだけは避けたいが...。
...やはりここまで来ておいてなんだが、入るのはやめておこうか。
そう思った時、後ろから人の来る気配と階段を上がってくる音がした。
ばっと振り返ると、眼鏡をかけた青年が荷物を持って立っている。
不思議そうにこちらを見ながら、どうやら戸惑っている様子である。
何故ここにこんな仮面をつけた変な奴がいるのか、訝しがっているように見えた。
そう思われてもまぁしょうがないのだけど。
それよりも、何故この青年はここに立っているのだろうか。
もしかしたら、この少年はここの従業員なのだろうか。
それならと思い、私は意を切って話しだす。
「...貴方はここのお店の方ですか?」
「......えっ、あっ、そうですけど、何かご用ですか...?」
私がそう聞くと、いかにも怪しがっているように...しどろもどろに、答えてくれた。
まぁしょうがない。しょうがないが、そんなに怪しまなくてもいいのに...。
私は看板を見て来たことと、手伝ってほしいことがあることをメガネの青年に伝えた。
「あれ、という事はもしかしてお客さんですか...!?」
「はい、一応そのつもりで来たのですが...」
「ご依頼ならぜひ!どうぞ入ってください!」
私にそう言うと、メガネの少年は目を輝かせながら扉に手を伸ばし、扉を開けてくれた。
まだ若い子だからアルバイトなんだろうなあかわいいなあ、と内心思いながら「失礼します」と中に入ると、後ろから入ってきたメガネの青年は、「銀さん!ご依頼ですよ!!」と奥に呼びかける。
どうやら、"銀ちゃん"は"銀さん"とも呼ばれているらしい。
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時