五十七話 ページ10
ころんside
少しの間、僕らは打ち上がり始めた花火を眺めていた。花火の炸裂音とどんどん増えていく人の声で、周りが騒がしくなってくる。
そして、Aが口を開いた。
『…ころんが羨ましいよ』
ころん「えっ?」
『ころんは良いなぁ…家に帰れば、お父さんとお母さんが優しく出迎えてくれて、妹と比べられることもなくて。ころんは顔が良いから、顔に悩んだことなんてないんじゃないの?』
…何も言えなかった。
確かに、僕は顔で悩んだことなどないし、Aの家のように、パパとママの仲が悪いわけでもない。
Aの言っていることは何一つ間違えていなかった
『…醜形恐怖症じゃなかったら、こんな顔に生まれてこなかったら…私はもっと違う人生だったのかなぁ…?』
ころん「っ…」
Aの目は、もう既に涙で溢れかえっていた。
こんなに弱々しく泣いているAを見るのは初めてだった。
『ごめんっ…こんな話っ、したいわけじゃないのっ…ごめん、なさいっ…』
Aは何度も何度も謝ってくる。
涙を早く止まらせようとしているのか、必要以上に強く涙を拭っていた。
…そんなに強く拭いたら跡になっちゃうよ。
僕は強く涙を拭い続けるAの手を止めた。
ころん「大丈夫だから。もう謝らないで? …僕は、Aを醜いだなんて思わないよ? Aは見た目も中身も、とっても素敵な女の子じゃん。そんなAが好きなんだよ?」
『っ…ころん…』
Aは再び酷く顔を歪ませる。
大粒の涙をポロポロと流し、両手で顔を覆った。
…てか、さらっと好きって言ったけど、ちゃんと伝わってるのかな…?
まぁ、状況が状況だし、無理かぁ…
そう思っていると、服の裾をクイッと軽く引っ張られた。
ころん「ん、どしたの?」
『…おねがい、してもいい?』
ズビッ、と鼻をすすりながら問うてきた。
え、これ断れるやついるの?
上目遣い+涙目の破壊力はやばい。
ころん「いいよ」
僕が了承すると、Aは恥ずかしそうに体をもじもじさせる。
顔はほのかに赤く染っている事に気がついた。
…そして、Aは言った。
『…ギューって、してほしい……』
ころん「……………え…?」
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あじゅき(プロフ) - ゆずたくあんさん» ゆずたくあんさんコメントありがとうございます!夢主ちゃん無事なんでしょうかね…? (2021年12月24日 10時) (レス) @page26 id: e43a74c31a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずたくあん - やだああぁぁぁあ()夢主ちゃん気になる…どうか無事であってくれ…! (2021年12月23日 20時) (レス) @page26 id: 2c620bbbe8 (このIDを非表示/違反報告)
そーだだお(プロフ) - 甘酸っぱい青春から一気にヤバイ状況に…この先どうなっちゃうんでしょうか… (2021年12月23日 19時) (レス) @page26 id: b62b3a7923 (このIDを非表示/違反報告)
あじゅき(プロフ) - 空白時さん» 空白時さん!!コメントありがとうございます!すっごく嬉しいです!!更新頑張ります! (2021年11月29日 14時) (レス) id: e43a74c31a (このIDを非表示/違反報告)
空白時 - コメント私の作品に私の作品にありがとうございました^^あじゅきさんも更新頑張ってください! (2021年11月29日 12時) (レス) @page19 id: f150051e85 (このIDを非表示/違反報告)
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