ミルクティー【青】 ２

七十六話 ページ30

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Aside




『…はい、おにぎりとお茶』


｢ありがと、｣




若干過呼吸気味だったころんの背中をさすりながら、お茶とおにきりを差し出す。

泣き腫らした目をおしぼり冷やさせていたところで、ころんが口を開いた。




｢…おいしい………天むす、？｣


『うん、そうだよ』


｢Aが作ったの？｣


『ううん。それ母さんが』




え、と硬直するころん。
おにぎりを見、そしてまた私を見る。
あれだけ気まずい雰囲気が漂っていたのに、何故？
きっと、そう思っているだろう。




｢…え、え？ 仲直りしたの？｣


『ううん。…きっと、母さんは仲直りしたいんだろうけどね。でも、馬鹿みたい。 おにぎりだけで心を動かせるわけないのにね』




そう言いながら、お茶を啜る。
ちらり、とおにぎりの乗ったお皿を見ながら言葉を続ける。




『……でも、そのたったのおにぎりだけで、気を許してしまいそうになってる私が、不思議で仕方がない』


｢…そっか｣




横目でころんを見ると、安心したような顔色を浮かべていた。
目を細め、睫毛が頬に影を作る。
陽の光に当たるころんの姿が、綺麗で、輝いているようで。目が離せなかった。




｢…A？ どうかした？｣


『…え、ううん。なんでもない…ていうか、ころんこそどうかしたの？』




その瞬間、ころんが あ…と眉を下げたのを、私は見逃さなかった。




｢……やっぱ、何でもない、かな｣


『…ほんと？』


｢うん…僕、もう帰るね…？｣




そう言って、ころんはゆっくりとソファーから立ち上がる。
何でもない、なんて絶対嘘だ。
でも、あまり聞かない方が良いかな…




｢…それじゃあ、また新学期にね、｣


『ん、気をつけて帰ってね？』


｢うん、じゃあ、また…｣




そう言って、ふらふら歩きでころんは家を出た。
玄関の外まで見送り、姿が見えなくなったところで、私も家の中に入ろうとドアノブを握る。
何だか後ろ髪を引かれる感じ。





グッ、とドアノブを強く握り締め、扉を開けた瞬間、




｢っAっ、！！｣


『…え、ころ………』




後ろから息の切れたころんの声が聞こえて、振り返って確認しようとしたら、体に温もりを感じた。
ふわ、とシャンプーのいい匂いが漂い、髪の毛が当たって、頬がくすぐったい。




身動きがとれなくなり、場の状況を理解するのに少し遅れた。







『………へ？』







ギュウ、と力強く私を纏う腕。
私は、ころんに抱きしめられていたみたい。

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