ミルクティー【青】 ２

七十話 ページ24

Aside


なんであんたが泣きそうなの、という言葉を喉の奥へと追いやる。


…なんで涙ぐんでるの？
別に、私が母さんのことをどうこう言ったって、何ともないんでしょ？
母の涙の意味が理解できず、困惑する。


『………ごめ、んなさい…』


訳も分からず謝ってしまった。
…別に、私が謝る必要などないと思う、はず……
だって、散々言ったのは母さんだ。
そんなに言うくらいなら、私からも言われたっていいってことなんでしょ？


…その覚悟もなく人の悪い所を言葉に並べるのは、おかしいと思うけど。


幼い頃、あなたが言ったんでしょ。
人の悪口を言うのなら、自分も言われるというその覚悟を背負わないと言ったのは、母さん。
直接私には言わなかったけど、言い聞かせるように夏帆と私に聞かせていた。


…あぁ、そうだ。
小さい頃からずっと、夏帆ばっかりだったなぁ。
母さんも、父さんも。
そうやって良い子だけ褒めて、悪い子は片隅へと追いやる。



そういう態度の差が、私が母さんたちを嫌う理由だってこと、分かってるのかな。


暫くすると、母さんがゆっくりと口を開いた。


「…ごめんなさい、私も頭を冷やすわ………」


とだけ言い残して、ベランダへと出て行った。
なんだか罪悪感が胸に残りながらも、二階へと階段を駆け上がった。



ドアを閉め、鍵をして、ベットにダイブする。
クッションをギュッと抱きしめ、顔を埋める。
…今日は散々だった、本当に。
せっかく、ころんと二人きりだったのに。



二人で屋台を沢山まわりたかったし、一緒に花火を眺めたかった。
それでも、それを邪魔するかのように、美奈や母さんが出てきて。
醜形恐怖症のこともバレたし、たくさん泣いた



…可愛くなかった、きっと。
それでもころんは、受け止めてくれた。
そんな彼を好きになってよかった、と改めて思う。



そしてふと、母さんが来る前の言葉を思い出す、
ころんはあの時、何か言いかけた。
そして、母さんに遮られた。



『……なんて言ったんだろ…』



まさか、と都合の良い予想を立てるけど、すぐにそれを打ち消す。
そんなこと、あるはずがない。
…けど、だとしたらどんなに嬉しいことか。



ころんは、今思い返せば少し悪い奴だと思う。
手を繋いできたり、抱きしめるのを許可してくれたり、軽々と触れてきたり、褒めるのが上手だったり。
そんなの、好きになるしかないじゃん…








ころん。
貴方は本当に、罪な男です。

七十一話→←六十九話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す