六十八話 ページ22
ころんside
怒りで顔を真っ赤に染め上げるの母親に対し、Aは段々と顔色を真っ青にする。
「帰りが遅いと思ったら、またこの子と…帰るわよ!!」
『ちょっと、母さん!!』
Aの腕を思いっ切り引っ張って連れて行こうとする。それを止めようと、僕もAの腕を掴んだ。
ころん「A嫌がってるじゃないですか!! やめてください!」
「うるさい! あんたには関係ないのよ、すっこんでなさい!!」
ドンッ、と体を押された衝撃で、後ろに下がる。
パッと前を向くと、鬼のような形相で僕を睨みつけ、歯をぎりぎりと鳴らす母親に、一瞬怯む。
でも、その横には涙目になりながらも必死に抵抗するAが目に映って。
ここで怯んでたらだめだ。
なんとしてでも、今はAを引き剥がさないと。
必死にAの腕を掴む。
『母さんやめてよ! ころんに手出さないで!!』
「黙りなさいA! どうしてあんたは母さんの言うこと聞いてくれないの…! きっと、この子のせいね。こんな子と絡むから、Aがおかしくなるのよ!!」
急に叫んだかと思えば、髪を引っ張り、フラフラと後ずさりしながらブツブツと何を呟き始める。
焦点のあっていないその目からは、狂気が感じられた
「なんで、どうしてみんな私の言うことを聞かないのよ…なんで…なんでなのよ……………うああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
喉が張り裂けるんじゃないかというくらいな大声を発し、Aのお母さんは走ってどこかに行ってしまった。
嵐のような空間から、一気に静寂が訪れる。
その空気を切ったのはAだった。
『…ごめんね、母さんが……』
ころん「……ううん、Aは大丈夫…?」
『慣れてるから。最近、母さん情緒不安定でさ』
…何があったかは、触れないでおこう。
必死に笑顔をつくろうとするAの腕を引っ張り、歩く。
ころん「…家まで送ってくよ」
『……ありがとう』
結局、会話はこれだけ。
その後は一言も喋ることができなかった。
Aの家に着くと、家の電気が付いていた。
…Aのお母さん、先に家に帰ってたんだな
『…じゃあね、ありがとう』
ころん「ん…また新学期にね」
そう言うと、Aはそそくさと家の中に入っていった。扉が開いた瞬間、何かが割れる音がして。
…また、片付けるのはAなんだろうな。
でも、僕にはどうにもできない。
名残惜しつつも、Aの家を後にした。
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