なんと素晴らしく憎い彼らを【利根 大夢】 ページ30
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同じ景色、ただ募る疲弊。
持久走はこれだから嫌いだ、つまらない。
入学初っぱなから問題は起こせないと理解しているからこそ、退屈しのぎに悩むものだ。
自分より劣っている真那斗があのクソ集団に勝てば、間接的に己の勝ちになるだろうかと少し誑かしてみたが……
「……真那斗にゃ無理だな」
アイツの運動神経は良くて中の上、今騒音と共にスパートをかけた奴らのペースを考えると、とても付いていけないだろう。
終わってからの疲労感が凄まじいし、疲れた姿を人に見せるのは嫌いなのだが、負けるのはもっと嫌いだ。
そろそろ先頭集団に混ざらなくては、いよいよ引き離されて追い付くこともできなくなってしまう。
「さっき得意そうに騒いでた割にはどうって事無い集団だな。やっぱりノーマルはノーマルか」
息を切らす真那斗に一瞥をやってから、残った奴らを追い越す……時に、ほんの少しだけからかってみせる。
そこの雑魚眼鏡に足でも引っ掻けてやりたかったけど、映像を撮っていると言っていたからあまり事を大きくはできない。
代わりに、今まさに走っているとは思えぬ余裕さをかまして鼻で笑ってやる。
案の定ノーマルはすぐに頭にきたようで、後ろから追い上げてくる音が耳に届く。
脚力には自信がある、抜かされてたまるか。
総合評価でトップ3ぐらいに留まることができれば上々かと思っていたが、撤回する。
「潰そう」
ノーマルの癖に思い上がったアイツらを、退屈だから。
靴下の上に輪を作るミサンガを揺らして、先頭集団の後続の背中を捉える。
「おいお前!!」
ちら、と後ろを見れば、そこには先刻煽った二人が。
一人は何の取り柄もなさそうな、『凡人D』なんてテロップが似合う男。
もう一人は髪どころか頭にまで花畑を作ってそうな女。
反動か既に息が上がっている、残り時間を気にしていないのか、まさに考えなし。
「貴方、さっきの言葉撤回しなさいよ!」
「さっきの……嗚呼、だってお前らノーマルだろ。実際どうってことないし」
「ぜ、絶対後で痛い目見るぞ!! それに人を馬鹿にしてて恥ずかしくないのかよ!!」
一人前に正義ぶって、事実を述べてるだけなのに何故批判されねばならないのか不思議でならない。
こうやって騒いでいるのを見るのも楽しいけれど、そろそろ先頭に追い付かないと。
「そういうのは俺に勝ってからにしろよ」とだけ最後に言っておいて、後は走ることに集中することにした。
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ヒメアミ(プロフ) - 更新しました!あと続編移行したので皆さんそちらにお願いします!…あと続き半濁音さんに繋げていただけると嬉しいです! (2020年4月3日 15時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 更新します! (2020年4月3日 14時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 終わりました。次の方お願いします。 (2020年4月3日 14時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 更新します。 (2020年4月3日 13時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - すみませんやっぱ止めます…m(_ _)m (2020年4月3日 11時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
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