May.48 ページ11
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「え!?ちょっと、何やってんの!?」
レオの手を慌てて止めるももう既に削除は完了されていた。
私の一言のせいで、レオの曲が1曲消えた…?今までの紙媒体であれば、粉々に破かれても一つ一つ繋ぎ合わせて複製することは可能だった。でも、パソコンの場合はデータを1度削除してしまえば、複製することなんてほぼ不可能。
「Aの意見聞けてよかったよ。この曲じゃ相手の要望をちゃんと飲み込めてなかっただけだから」
「だ、だからって、消すことないじゃん!」
「ん、まあ気持ちの切り替え的な?ごめんな、ちょっと頭冷やしてくる」
そう言って出ていってしまったレオを私はただただ見つめるのことしか出来なかった。
*
ああ、やってしまった。高校2年の革命の時、レオの曲は誰にも聞いて貰えなくなった。私もその革命に巻き込まれて自分のことで精一杯になってしまってレオに目を配ることが出来なかった。そのままレオは停学になり不登校。
でも、レオが戻ってきてくれた時楽しそうに作曲してた。トラウマになっても仕方がなかったのに。その姿を見て、今度は絶対レオの曲は聞き逃さないようにしようって、そう決めてたのに。
私がレオの曲を消してどうすんだ!
「んあ?どしたん、Aさん?」
「みかくん。」
タオルを目に当てて涙をこらえていると、声をかけてきたのはみかくんだった。
「なんか悩み事なん?俺で良かったら、聞くで?」
「天才の考えてることがわかんない」
「?月永先輩のことなん?」
みかくんの言葉にうなづけば、「俺もお師さんのことはようわからんって思うこともあるけどなー」と1度考えてから、何を思ったのか急に電話をかけ始めた。
「お師さん?いま、電話してもええ?」
「なんだね、影片。今、作業中なのだよ」
「んあ、やっぱりそうやったかぁ。今な、Aさんが落ち込んでねん。でもな、俺なんて言って励ましたらいいかわからへんの」
「そんなことは自分で考えたらどうだね。…今ちょうど区切りがいい所だから、聞いてやってもいいのだよ。話してみたまえ、A」
宗の言葉に私はぽつりぽつりと話し始めた。
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作者名:玲咲 | 作成日時:2021年5月1日 0時