episode.63 ページ17
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「美味しい!」
「だろォ〜?俺っちのニキきゅん特製ケーキだからなァ」
そう、ここは『Crazy:B』の椎名ニキさんが経営しているカフェらしかった。今日はたまたま個人のお仕事で椎名さんは不在らしいが、いつもはここにいるみたいだ。
「ユタくんは高いの頼みすぎな?娘ちゃん、見習った方がいいんじゃねェの」
「えー、そんなこと言っちゃって〜!これ、すっごく美味しいです!」
「いい歳した男に可愛こぶられても嬉しくねェよ」
「ギャハハ」と大きな声で笑った燐音さんは、頬杖をついて、目を細め笑みを消した。
「それで?何の悩みがあんだよ」
その瞳は私を捉えていて。…なんで、わたし?
「何のことですか?」
「とぼけんなよ。顔見りゃ分かる」
「何もないです」
「嘘、ある」
「ないです」
「ある」
「だから、ないですってば!!」
思わず、椅子から立ち上がれば、周りから変に注目されてしまい恥ずかしくなる。「すみません」と席に座れば、居心地が悪くて今すぐにでも帰りたくなった。
私の姿を見て、ため息をついた燐音さんは「そうかよ、じゃあ、零ちゃんは元気にしてんのか?」と言った。……知らないよ、そんなの。だって、最近ろくに会話もしてない。
「元気ですよ」
「ダウト」
「……」
居心地が悪くて、ケーキを口に運べば、さっきまで美味しかったケーキの味がしなかった。なんで、ゆうたさんは私をここに連れてきたの?
「悩んでるなら燐音先輩に言ってみるといいよ。この人、色々道踏み外してるから安心出来る」
「ほんと、俺っちに対して失礼だよなァ。あ、そうだ。娘ちゃんにこれやるよ」
そう言って差し出したのは、チョコレートのお菓子だった。
「…ありがとうございます?」
「ちなみに、それ、パチ屋の景品な」
「ぱちっ!?」
この人アイドルだよね……?パチンコって……?は?
「ね、アイドルとして、道踏み外してるでしょ。だから、安心して話していいよ。
大丈夫。俺たちはAちゃんが考えてることとか絶対否定しないし、誰にも言わないよ。身内に言えないことでも、今日初めて会った人には言いやすいんじゃない?」
目を細めて笑って、ゆうたさんは優しく私の頭を撫でた。
「……私、」
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時