episode.58 ページ12
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「朔間さーん!昨日、お友達と喧嘩しちゃったことをお父さんに話したら、お父さん怒っちゃってさ...、相手の子の家に怒りに行くって聞かなくて...。朔間さん、お父さんに気に入られてるから朔間さんからも止めてくれない?」
涙目になりながらそう言ってきた子は、とあるベテランプロデューサーの娘さんだ。私をよくキャスティングしてくれたり、気にかけてくれたりして、とてもお世話になっている。
だからと言って他人の家族に私のような部外者が口出しする訳にもいかない。仮に言ったとして、相手方を怒らせたら...と思うと、リスクも大きい。どうしたものか...と考えていると、突然声を掛けられた。
「あのさ、」
顔を上げるとそこに居たのは、最近あんまり話していなかった瑞希だった。
「Aのこと、ちょっと借りてもいい?」
「今は、私が朔間さんと話してて、」
「先生が呼んでるから、ごめんね」
「それなら、仕方ないね。後で聞いてね」と残念そうにした彼女に謝って、瑞希に付いていく。ちょっと命拾いしたな、なんて思いながら辿り着いたのは屋上だった。
「あれ?先生は?」
「あー、あれ嘘。とりあえずここ座って」
近くにあった石でできた足場に腰をかけた瑞希は、隣を指先で叩いた。私が渋々座ると満足そうに瑞希は笑った。自分のお弁当箱を開いて「あーん」と私の口に卵焼きを入れてくる。
「え?」
「...いいから、あーん」
「あ、あーん」
瀬名家の卵焼きは甘くて美味しかった。でも、突然どうして?
「あんた、痩せすぎ。ちゃんとご飯食べてるの?」
「ちゃんと寝てるの?」
瑞希、私の事心配してくれたんだ。優しいもんね。
瑞希は私のことを一人の人として見てくれてる。だから、こうやって仲良くやってこれたんだ。対等な関係でいられたんだ。「ありがとう」と言おうとした時、瑞希が先に口を開いた。
「仕事にも影響出るよ。急に体型が変わったらモデルとして扱いにくくなる。食べてない寝てないんだったら、仕事の能力も落ちる。そんなんで、俺の足引っ張らないでくれる?」
「あんたは俺と違って『天才』なんだから、それくらいできるでしょ」
前言撤回。何も理解してない。
「迷惑かけてごめんね」
私は瑞希にだけは『天才』って言われたくなかったよ
「もう心配かけないから。ばいばい、
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時