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建物の中にいたミカサに作戦変更を伝え、共に外へ飛び出たその瞬間。
「なっ、…！」
ハンジの足は止まった。
地下から出て真っ先に目に入ってきた、見慣れた金髪。その奥にも見慣れた巨人の姿が二体見えたが、ハンジはただ目の前のそれに釘付けになった。
筋肉質な裸体、遥か頭上で靡く金糸の髪、海の如く澄んだ蒼い瞳。
「私はアニに！」
「あ、あぁ！頼んだよ！」
反対側でイェーガー派を蹴散らす女型へ向かっていったミカサ。ハンジも慌てて地を蹴り上げてガスを吹かした。
これが、あの子の巨人の姿。四年前、死んだはずのルアナの命を繋いだ、力——なのか。
「ルアナ！！」
ハンジは彼女の広い頬肉にアンカーを刺し、揺れる金髪をひと束握った。
「作戦変更だ。船で離脱して大陸で飛行艇を整備する！」
《大陸デ？》
「アズマビトが出てくる。乗船の援護をしてくれ！」
《…分カッタ》
彼女が首を縦に振り、彼女の頬に片足を掛けていたハンジの身体は宙吊りになる。
分かってる。こんな時にこんなこと、してる場合ではないけれど。
「ほおぉ……っ」
ハンジの頬は紅潮した。
巨人から言葉が、意思のある言葉が、意味のある形で返ってきた。たったそれだけだ。意思を交わしただけではない、言葉が通った。こんな状況でなければ、頭の中で妄想しまくったありとあらゆる実験を————。
「うおっ、」
突然巨大な腕が視界を横切った。彼女の腕だ。払われた雷槍が空中で爆発する。どうやら動きが止まった隙を見てイェーガー派が雷槍を打ち込んできたらしい。
《指示ハ分カッタ。ココハ任セテクレテ構ワナイ》
いいからさっさと行けってか。
懐かしい彼女のそっけない返しに苦笑しつつ、ハンジは彼女の広い頬を叩いた。
「任せたよ！」
そう叫んで背を向けたハンジが、巨体の奥のわずかな高揚を知る由はない。
今は雑念となるそれが削ぎ落とされた、彼女の表情も。
《————オ節介ナ、クソメガネ。》
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2024年2月19日 8時
