32 -The Pride- ページ33
時間を遡ること数刻。場所は変わって、ウォール・マリア内の巨大樹の森の入り口。
銃声が二発と、倒れ込む兵士の遺体が二つ。そのどちらも深緑のマントには自由の翼が刻まれている。
「くっ………」
緑に紛れて、兵士が一人唇を噛み締め、涙していた。
左目に眼帯をつけたメガネの兵士——14代調査兵団団長ハンジ・ゾエだ。そして——。
「……もう追っ手はいなくなったよ。——リヴァイ」
彼女が草むらをかき分けて語りかけた先は、顔の大部分をマントによって覆われた『人類最強の兵士』——リヴァイ・アッカーマンである。彼は固く目を閉じており、意識がなく、顔面は蒼白だが息はある。
彼女の言った通り、リヴァイは、無事ではないが生きていた。
ハンジは殺したイェーガー派から銃を奪い、付近を捜索だか監視だかしているイェーガー派を三人撃ち殺し、簡易テントと壊れた荷馬車と一匹の馬を手に入れた。
巨大樹の森の開けた場所にテントを建てている内に日が傾き始め、背の高い木々に囲まれているそこはすぐに光が入らなくなった。ハンジは火をつけてからリヴァイの治療に取り掛かった。
「みんな巨人にされたけど、君だけ生き残った。このケガでまだ生きてるのも同じ理由だろうね。君がアッカーマンだからだ」
裂傷していた顔の傷を縫合し、包帯を巻く。できる限りの手当てが終わると、ハンジはリヴァイに背を向けて座り込み、額に手を当てた。
鈴虫の鳴き声と火の粉がパチパチと破ぜる音、時折風で木の葉が擦れる音が響く森の中。
ハンジはそっとリヴァイを後ろ目に振り返った。今や顔の四分の一が包帯に隠れ、恐らく右目はもう見えないだろう。ハンジは膝を抱え、腕の中にそっと顔を埋めた。
「……これは、どうしたもんだろう。私たちじゃジークを止められないだろうし、アルミンやピクシス司令に託すしか…」
自然と心の内は声に出ていた。
「例えばエレンがジークを裏切っていたとしても、イェーガー派が脊髄液でこの島を支配するなら、私たちは一生この島のお尋ね者。」
ハンジの脳裏に四年前の憲兵の姿が過ぎる。
「……多分、順番が来たんだ。自分じゃ正しいことをやってきたつもりでも、時代が変われば牢屋の中……。いっそ二人でここで暮らそうか、…ね、リヴァイ」
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ふゆ(プロフ) - めっちゃ引き込まれるお話ですね！！！ほんとに更新が楽しみです！ (12月2日 0時) (
レス) @page38 id: 484893ce06 (このIDを非表示/違反報告)
せい - 最近イッキミしたもので！最高しか言えません！！応援します！ (11月28日 4時) (レス) id: 9598d06351 (このIDを非表示/違反報告)
あい - とってもおもしろくて一つの物語として楽しんでいます。続きのお話が楽しみです！ (11月22日 19時) (レス) @page32 id: fbec67f27a (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらいました。作者様のペースで良いのでこれからのお話も楽しみに待っています！！ (11月22日 17時) (レス) id: c807065baf (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 更新待ってます！！頑張ってください！！ (11月12日 17時) (レス) id: 2973651174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年8月1日 8時
